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学長トピックス 2008年10月号

愛媛大学で開催された国立大学理学系学長会議に参加しました

有本氏の講演

10月2日、3日の2日間、愛媛大学が当番大学になって、平成20年度国立大学理学系学長会議が開催されました。この会議は、理学部出身の国立大学の学長が年1回2日間集まって開催する会議で、国立大学時代の1991年(平成3年)から続いているものです。私と総合研究大学院大学の高畑学長は、この4月から学長就任したため初めての出席です。また、退任後一年間は、前学長も出席できるとのことで、前月9月30日まで京都大学学長であった尾池学長も出席されました。

出席者は、上記以外には当番大学の小松学長、佐賀大学の長谷川学長、奈良教育大学の柳澤学長、福岡教育大学の大後学長、奈良女子大学の久米学長、情報システム研究機構の堀田学長、それに会議の講師である有本建男JST社会技術研究開発センター長の10人でした。

2日の会議は、道後温泉の老舗旅館である「ふなや」で、2日午後から夕方まで開催され、その後、同所で懇親会、翌日は、柳澤・久米・堀田・有本の各氏は所用のため帰られましたが、それ以外の方共々、愛媛大学のセンター等の施設見学会に参加しました。そして、昼食後、散会しました。愛媛大学の学長秘書室の方々には、会議や施設見学など行事の日程中大変お世話になりました。

会議の内容について述べましょう。講演は、有本講師による「大学・人財・イノベーション―第4期科学技術基本計画の課題―」です。午後2時から始まり4時半までの講演でした(質疑を含む)。講演はPPTによるものでしたが、豊富な科学技術政策の知識と綿密な政策分析に基づく大変示唆に富むものでした。

氏は、時系列的に、2010年度から6年間の国立大学法人の第二期中期目標期間が始まること、2011年度から5年間の第4期科学技術計画が始まること、これを「大競争・ポストキャッチアップ時代、新しいイノベーション・システム」の時代で、その変化に対応する「価値観・ビジョン・目標の再設定」による「人材、知識、組織、資本、設備、制度・政策の再配置」の必要を訴えました。そのためにも、大学制度の総点検が必要で、800の国公立私立大学、80の国立大学を一律に議論されては効果が薄いとし、大学への公的投資の拡大が必要としました。

さらに、大学の中長期的なあり方として、①人口減少期におけるわが国の大学、②グローバル化の中での大学、③社会や学生の多様なニーズに対応する大学制度と教育、の観点からの検討課題を提起しました。

そして、話は、「イノベーションとは何か」という定義に始まり、「なぜ今イノベーションなのか」という点に移りました。氏も出席された「Business Leadership Forum(2007065-7,St.Petersburg)」でのS.Palmisanoの話の紹介など、わが国の科学技術政策の立案に直接関わってきた氏ならではの、広がりのある話が聞けました。

氏は、最後に「相対的に小さくなっていく地球の上で、科学技術のテーマの選択において、研究や開発に取り組む姿勢・形態において、何に価値を置くべきか、は『知のエートス』に大きく依存する。しからば21世紀に相応しい『知のエートス』は何であろうか?」という問題提起で終わりました。また、この3月にだされた「科学技術の智プロジェクト(座長:北原和夫ICU大学教授)」による「日本人が身に付けるべき科学技術の基礎的素養に関する調査研究」の報告書の一読を薦められました。このコーナーの読者の皆さんも、一読ください。特に、「人間・社会科学」がお薦めとのこと。

さて、この講演の後、私から話題提供した「理系博士号未就職者に対する支援策について」の討議に移りました。私からの問題提起は、別紙資料(PDF)を参照ください。尾池京大前学長からは、「京大で100人のポスドクを10年雇用できる制度を作ってほしい」とのことを引き継いだとの発言もあり、また、愛媛大学では、「研究高度化支援室」の職員として「ラボマネージャー」「リサーチアドミニストレーター」など学位を持った研究者を職員として雇用する制度案について説明がありました。また、民間企業へのポスドクシフトのための方策など、さまざまな観点からの議論がありました。

 

3日の愛媛大学施設見学では、「地球深部ダイナミクス研究センター(GRC)」の大型多アンビル型高圧発生装置(40万気圧、2500度Cを実現)による他結晶ダイヤモンドの生成や鉱物物性シミュレーションなどなど最先端の研究の紹介がありました。続いて、グローバルCEOプログラムを獲得した「沿岸環境科学研究センター」での世界的規模での化学物質汚染調査の研究などの紹介や10万点の資料を零下24Cで保存してあるes-bankの冷凍室での保存状況の見学などを行いました。次は、「無細胞生命科学工学研究センター」の小麦の胚芽から抽出した液による淡白質自動合成装置の開発やマラリアワクチン開発、進化工学部門での研究紹介などがありました。最後は、この4月から法・教・工・理の学部別の学生窓口を統合し、図書館(4階建て)の一階部分に設置した教務と学生支援のサービスステーションを見学しました。ユニークに思ったのは、愛媛大学では、約300人の学生(全学生数約8千人)がステューデント・キャンパス・ボランティアとして登録し、学生メンターズ、国際交流コーディネーター、ボランティアコーディネーター、ECOキャンパスサポーターなど9種類のボランティアに登録し、日々活動し、それを大学が支えるというシステムでした。また、図書館は、2階から4階に集約し2-3階を開架及び書庫として利用、4階は学習室にし、席を少し増やして600席を確保したとのことで、学生の評判も上場とのことで、職員の説明の端々に、「学生本位に!」という言葉が出てくるのを聞き、改革の進展を知ることができました。

教務関係 学生支援関係

(写真上は、有本氏の講演を聴く参加者、下2枚の写真は、新装となった愛媛大学4学部共同学生支援センター(教務関係と学生支援関係))

南部陽一郎、益川敏英、小林誠の三氏の2008年度ノーベル物理学賞受賞について思うこと

10月7日夕刻、スウェーデンのノーベル物理学賞の委員会は、上記三氏に本年度の物理学賞を授与すると発表しました。帰宅して、夕食をとっているとき、NHKのニュースでこのことを知りました。本当に嬉しいニュースでした。

南部先生は、素粒子論の大先輩で、私が大学院で素粒子論を専攻した時には既に、雲の上の方でした。アメリカのシカゴ大学から、時々日本に帰られて国際会議等で講演を神のご託宣の如くお聞きするという大御所でした。氏の業績は、今回の授賞理由にもあるように、「自発的対称性の破れという概念を素粒子理論に適用し、素粒子に質量が生まれる仕組みや、真空が素粒子に与える影響の解明」です。

また、小林・益川両先生の業績は、CP対称性の破れ(この宇宙では、物質が反物質より若干多く存在する)ためにはクォークに3つのファミリー(1ファミリーが2種類のクォークからなり、したがってクォーク6種類)が存在すべしということを、1973年当時4種類もしくは3種類のクォークしか知られていない段階で予想したことです。具体的に、6種類のクォークが、実験的に確認されるのは1980年代ですし、CP対称性の破れの機構が、小林・益川模型によることが高エネルギー研究所のB-工場の実験結果で示されるのは、2000年代に入ってからです。このことを今から30数年前に解明したのです。(詳しくは、ノーベル財団のホームページをご覧ください。)

さて、益川先生は、私が4年生の時に、ディラックの量子力学のゼミのチューターでした(当時、名古屋大学理学部物理学科助手)。小林先生は、僕の学部学生時代に時々お見かけしましたが、いかにも秀才肌という感じの方でした(当時、大学院生)。いずれにしても、僕も広島大学大学院で指導教員として故小川修三先生、直接の指導は林武美先生(現皇學館大学教授)のもとで素粒子論を専攻することになりました。以来、40年近く経ちますが、このように身近な方がノーベル賞を受賞されるというのは、本当に嬉しいできごとです。暗いニュースが多い中で、このニュースは、一筋ではあるがこれからに希望の持てる明るい光を与えて、元気をくれました。

理科離れ等が話題になりますが、これを機会に、基礎科学や教員養成など、派手さはないが、着実に人類の文化に貢献している分野に光があたってくれればと願っています。

大学基準協会総会及び講演会に出席しました

講演中の山崎氏

10月10日(金)午後から京都駅前のキャンパスプラザにおいて、表記の行事があり、出席しました。大学基準協会は、国公私の大学が加入している全国的な組織で、300余の大学等が会員校です。また賛助会員校も150余あります。本学は106番目(加入順)に記載されています。会長は、納谷廣美明治大学長です。総会は、会長挨拶ののち、決算予算案を承認し終了しました。終了後、講演会と3大学の事例報告ののち、3大学に有信東芝顧問を含む4人の方のパネルディスカッション(司会:生和秀敏大学基準協会特任研究員)があり、17:30に閉会しました。参加者は、260人(主催者報告)でした。

基調講演は、山崎正和中教審会長でした。氏は、現在の義務教育制度に強制力がないことなどを問題として指摘したのち、教育における格差の問題を取り上げ、大学の実情を踏まえ、その問題点を指摘されました。

事例報告は、九州大学、大阪市立大学、関西学院大学からそれぞれ報告がありました。九大は、大学全体の特に研究面での国際評価分析と、さらなるレベルアップを図るためのQS評価の分析などを踏まえ、大学として強化しなければならない分野などの分析結果の報告がありました。しかし、教育面での評価指標は難しく未着手ということでした。2番目の大阪市立大は,大阪市大文学部の研究評価の結果とそれを教員の給与等にどう反映させたかなどの報告、3番目は、学士課程教育の出口保障という点から、自己点検・自己評価の重要性を指摘し、その中に機能をチェックするシステム、具体的にはPDCAサイクルが機能しているか、が問題との指摘が、有本氏からありました。

(写真:講演中の山崎正和氏)

教職大学院協会が発足しました

設立総会の様子

2008(平成20)年度4月に、国立15大学私立4大学の計19大学で発足した教職大学院について、日本教育大学協会(会長:鷲山東京学芸大学長)において準備が進められていましたが、教職大学院の質的向上と設置大学間の情報交換や全体としてのレベルアップを図ることを目的に、教職大学院協会が発足しました。設立総会は、10月16日(木)11時から12時までKKRホテル東京において開催されました。

会長校に兵庫教育大学、副会長校に東京学芸大学、早稲田大学を選出し、運営校に、3大学のほかに、北海道教育大学、福井大学、京都教育大学、岡山大学、宮崎大学を選出しました。今後の具体については、この8大学選出の運営委員で検討が進むことになります。
会長挨拶では、梶田兵教大学長から、教職大学院学部直進者に対する様々な措置について、協会として都道府県教育長協議会と懇談の場を持ちたいこと、質保障としての評価機関(専門職大学院は、設置後5年間に一回認証評価を受けることが義務化されている)の立ち上げや、お互い協力し合いながら質を上げるためのシンポやFDの具体化を図るなどの抱負が述べられました。
総会では、加入費用と会費について、研究科としての加盟の大学もあり、さらに検討してほしい旨の要望も出された。また、認証評価機関については、日本教育大学協会のプロジェクト委員会(委員長:柳沢奈良教育大学学長)と連携して進めていくことが確認された。

(写真:設立総会の様子:中央が鷲山教大協会長、右隣が梶田教職大学院協会長)

本学で、日本教育方法学会(10月11-12日)、日本思想史学会(10月18-19日)、日本箱庭療法学会(10月25-26日)が開催されました

表記の3学会が、本学で開催されました。3学会とも、本学で開催されるのは初めてのことです。丁度、本学では耐震工事が第一人文棟と自然科学棟で施工中のため、休日とはいえ、少しうるさい中での学会開催となりました。いずれも好天に恵まれ、自然がいっぱいの本学での開催で、休み中の散歩など本学の自然を満喫いただいたのではないかと思います。

アケビ 金木犀の花

[今年、キャンパス内でとれたアケビ、上品な甘さです。右は、金木犀の花で染まる本部前の写真]

教育方法学会(実行委員長:子安潤教授)と日本思想史学会(実行委員長:前田勉教授)では、私が会場校を代表して、挨拶いたしました。また、教育方法学会では、夕方から生協で行われた懇親会にも出席させていただき、参加者の方と懇談いたしました。北海道教育大学の三上教授や、福岡教育大学の高田教授、鹿児島大学の河原教授など、教大協などで既知の方も参加されており、楽しい時間を過ごしました。

挨拶の中で、特に最近の高等教育をめぐる状況が、国際化とグローバル化の名のもとに、格差と分断、選択と集中、評価と競争、選別と多様化などが当たり前のように声高に叫ばれている状況を踏まえ、今一度立ち止って熟慮し、基礎科学や人文科学の分野など必ずしもすぐに役に立たない分野にもきちんと日が当たることが、人類普遍の文化を創造していくためにも重要ではないか、という趣旨のことを述べました。

日本箱庭療法学会(実行委員長:生島博之教授)では、横地理事に出席及び挨拶をお願いしました。