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学長トピックス 2009年11月号

韓国を初めて訪問しました-その1-

10月5日から10日まで6日間にわたり、韓国を訪問しました。日本と韓国の教育大学の第2回学長会議が、ソウル教育大学校で開催され、日本からは、北海道,宮城,東京,上越,愛知,奈良,大阪,兵庫,福岡の9大学、韓国は、ソウル、晋州、光州、清州,京仁、全州,公州、大邱,釜山,春川,および韓国教員大学校の11大学、合計20大学の会議になりました(プログラムは、別紙参照)。

私にとっては、初めての韓国訪問です。佐藤理事・副学長(教育担当)と一緒に参加しました。佐藤理事は、韓国生まれだけにこの国に対する思いは強いものがあります。今から100年前の1909年10月26日、安重根という朝鮮の方が、ハルピン駅頭で明治の元勲・伊藤博文を射殺した事件がありました。日本はその翌年,韓国を併合し、以来36年間、日本が朝鮮を占領し植民地化します。機中ではこうした話をはじめ、韓国への思いなどいろいろ話をすることができました 。※1

韓国訪問の様子その1

セントレアを10月5日12時発のアシアナ航空機で仁川には14時に到着し、そこで福岡からの大後学長と合流し、リムジンバスで市内のホテルに向かいました(料金14,000ウォン,約1100円)。高速道路網の整備と窓外に見える高層のアパート群やビル群などには目を見張るものがあります。70分後に江南にあるRAMADAホテル到着です。
この日は、予定はなく、3人で地下鉄を使い、市の中心部にある南大門を見に行きました。地下鉄の切符には、いろいろ種類があるようですが、私たちは1回使いきりのチケットを購入しました。このチケットを買うまでが、大変でした。片道1,200ウォンと日本に比べずいぶん公共料金が安いようです。2号線から4号線に乗り換え會賢駅下車で宿舎のRAMADAホテルから50分かかりました。南大門は数年前の放火で焼け落ち、再建中で、元に戻るには後数年はかかるようです。塀に囲まれていましたが、一部石垣の部分が残っているのを目にすることができました。後は観光ガイドどおりに、南大門市場を見学し、駅の近くの食堂で、チゲ鍋に舌鼓を打ちました。私はアルコールが一切だめですが、佐藤さんと大後さんは、地元のビールをおいしそうに飲まれました。また途中で買った肉まんは、大変お安く大変美味でした。二つで1000ウォン、五つで2000ウォン、それがわからず、3つといって、売り子のおばさんを惑わせることになりました。1000ウォンに量子化されていることを知った次第です。市場は大変活気にあふれ、衣類をはじめ、いろんなものがあふれており、品物を求める人でごった返しています。

韓国訪問の様子その2

翌6日は本番の会議の日です。午後にホテルに大学のバスが迎えにくることになっていましたので、朝はホテル裏の三陵公園を見学に行きました。この公園は李朝9代のハングルを考案したことで有名な成宗とそのお后、11代の靖宗のお墓があるとても広い公園で、一周するのに小一時間かかります。公園ではリスの姿も見ることができます。都心にあって、緑豊かな公園で朝早くから市民がたくさん散歩やジョギングをしている姿を目にしました。
 

韓国訪問の様子その3

さて、午後からの会議です。日本の参加者すべてがバスに乗り込みソウル教育大学へ向かいます。地下鉄2号線の「三陵駅」から西に向かって三つ目の駅に「教大前」がありましたので、ホテルからそう遠くはありません。大学は、大変こじんまりとした中に、立派な建物群があります。大変きれいな印象です。到着後、早速構内の見学です。韓国教員大学校を除く10教育大学はすべて小学校教員の養成ですから、附属学校も小学校だけです。この日の午後は特別活動の日で、合唱クラブ、調理クラブ、民族楽器クラブ、日本語クラブなどの活動を見学しました。合唱クラブでは、「ありらん」と日本語で「ふるさと」を歌ってくれました。この日に備えて練習を積んできたそうです。調理クラブでは、生春巻きをご馳走になりました。それぞれのクラブのレベルは相当高く、日本語クラブでは2人の生徒の日本語会話を実践していました。また、構内のグランドは人工芝が敷かれ、小学生と大学生が一緒に練習に励んでいました。教育センターは現職の先生の再教育の場だそうですが、8階建ての大変立派な建物で、情報機器も完備し、中には博物館のフロアもあり、一般市民にも開放されていました。

韓国訪問の様子その4

見学を終え、会議が15時から始まりました。まず、会議室の入り口に韓国教員大学校を加えた11大学の学長の方々が並んで迎えてくれ、名刺の交換から会議が始まりました。会議は、三つのテーマが設定され、そのテーマごとに日韓の学長一人がそれぞれ10分ずつプレゼンを行い、質問するというかたちで休憩を挟んで17時半まで続きました。最初に、ソウル教育大の宋学長が挨拶、日本側は、世話役校である大阪教育大の長尾学長が挨拶されました。

テーマ1:小学校教師養成教育課程:主要争点と改善方向
日本側 鷲山恭彦東京学芸大学長
韓国側 鄭寶柱(ジョン・ボジュ)晋州教育大学総長

 

テーマ2:教養課程と専攻課程:現況と課題
日本側 本間謙二北海道教育大学長
韓国側 金洙奐(キム・スファン)清州教育大学総長

 

テーマ3:教育実習領域:現況と課題
日本側 松田正久愛知教育大学長
韓国側 金善培(キム・スンバェ)春川教育大学総長

卒業単位は、日本側の11大学平均は130(124-136)単位、韓国では、小学校教員の養成は教育大学に限定されており、教育大学共同開発案に基づく基準単位は2000年度以降140単位とされ、この基準に基づく教育大学10大学平均143(134-147)単位で、単位構成は、日本側が一般教育(教養科目等)平均で26単位、教職専門科目と教科専門科目を合わせて専門教育で括ると98単位(81-113)、自由科目が6単位に大きく分類されるが、韓国では、これに相当するのが「教養課程」「専攻課程」である。またこれらに加えて、「深化課程」20-21単位がある。この深化課程は、教科専門科目等に相当する 。※2

会議終了後、場所を青互台近くのレストランに移して、懇親会は7時過ぎから始まり、途中、韓国の民族楽器等の演奏会の見学をはさんで、10時ごろまで続きました。

※1 雑誌「世界」(岩波書店)10月号に「安重根「東洋平和論」」(訳 伊東昭雄)がある。参照されたい。また、ソウル市内中心にある南山には安重根義士記念館があり、今年の10月26日には、この記念館前で、記念の式典が行われたことを新聞各紙が報道した。

※2 韓国の教員養成に関しては、会議で配布された資料等を基に別途作成予定です。興味のある方は、ご連絡ください()。

教員養成系大学・学部の学芸課程(新課程)の協議会に出席しました

教員養成系大学・学部の学芸課程(新課程)の協議会に出席の様子その1

11月13日(金)13時から、大阪教育大学を開催大学として「第16回日本教育大学協会新課程連絡協議会」が「教育学部における新課程の存在意義と今後の展開について」をテーマに、大阪市内のホテル中ノ島センタービルを会場に17時まで開催されました。本学から、澤自然科学系学長補佐・大澤現代学芸課程連絡協議会代表・玉越法人運営企画課企画係長の4人で参加しました。これは、教員養成系大学・学部におかれている通称「新課程」=「教員免許を卒業資格としない教育学部にある課程」(0免課程と呼ばれることもあります)で、全国の教員養成系大学・学部の総入学定員1.5万人のうち、0.5万人の入学定員を有する課程で、1987年以来、多くの教員養成系大学・学部に設置されています。愛教大では、この新課程を「現代学芸課程」として、リベラル・アーツ教育を担う組織として2007年度に再構築していますので、ここでは「新課程」を「学芸課程」と称することにします。

さて、会議では、35大学76人の出席者がありました。会議は、日本教育大学協会会長の鷲山東京学芸大学学長と開催大学の長尾大阪教育大学学長の挨拶の後、記念講演として、佐藤禎一元文部事務次官(現在は、東京国立博物館名誉館長)による「高等教育を巡る諸課題-世界に共通の課題とすれ違う認識-」がありました。氏は、ユネスコ大使などの経験から世界の高等教育のさまざまな状況について、幅広い知見から問題点を指摘されました。特に、今後予定されている OECDによる高等教育の質的保証に関する調査の中でのリベラル・アーツの位置づけの話は興味深いテーマでした。

教員養成系大学・学部の学芸課程(新課程)の協議会に出席の様子その2

続いて、参加大学の中で、福島大学人間発達文化学類、福岡教育大学、宮崎大学教育文化学部、大阪教育大学教養学科からそれぞれ報告がなされ、この報告を基に参加者の意見を交え活発な議論が行われました。この議論の中身については、開催大学から詳細な報告集が出されるので、それを参照いただくことにします。皆さんの議論は、国立大学法人法の規定に則り、6月に出された文科大臣決定に記載された「教員養成系大学・学部は、教員採用数の動向等を踏まえ、入学定員や組織等の見直しなどが必要」を巡って、各大学のさまざまな対応、あるいは新しい政権が打ち出している6年制教員養成への転換などが話題でした。文部科学省の方々は、この学芸課程は、教員の需要が十分ないときのバッファとしての機能しかないのだ、といいますが、果たしてそうでしょうか?私は、教員養成にとって、学芸の要素はとっても大切だと思っています。「学芸」といってもぴんと来ない方もいらっしゃると思いますが、厳密な差異を別とすれば、「教養」と言い換えてもいいでしょう。教員を目指す方にとって、この教養をきちんと身に付けることは、教師としての人間の広さ、ものの見方に関する大事な要素だと思います。こうした教養を大学でちゃんと展開していくためには、学芸の教育は欠かせませんし、このための教員の確保のためにも、そして何よりも多様な教員養成を進める上で、学芸課程はとても大切な要素だと思います。この「学長室便り」をお読みいただいている皆さんはどう思われますか?

さて、愛教大の学芸課程について紹介しましょう。現代学芸課程には国際文化・日本語教育・臨床福祉心理・造形文化・情報科学・自然科学の六つコースがおかれています。この課程の入学定員は、全入学定員の27%、232人です。実際には250人程度の入学者です。これは、2007年度からですので、来年度この課程の初めての卒業生が社会に巣立ちます。ちなみにそれ以前は、国際教育・生涯教育・情報教育・環境教育の4課程395人の入学定員でした。

こうした会議では、事前に、開催大学が、「承合事項」を各大学に問い合わせ、それをまとめるのが通例になっています。今回の会議の承合事項は2点あり、一つは「平成20年度新課程卒業者の進路状況」もう一つが「新課程の組織等について」でした。前者については各大学からの回答が表にまとめられています。愛教大の学芸4課程の卒業生の進路は、2009年度卒業生では次のようになっていますので紹介しましょう。

課程名 卒業者数 教員就職者数 一般就職者数 進学 その他
正規 臨時 合計 企業 官公庁 合計 愛教大 他大学 合計
合計 409名 79名 52名 131名 177名 27名 204名 19名 9名 28名 46名
国際理解教育 133名 18名 10名 28名 75名 10名 85名 5名 2名 7名 13名
生涯教育 101名 15名 8名 23名 42名 7名 49名 9名 5名 14名 15名
情報教育 88名 22名 13名 35名 39名 3名 42名 2名 0名 2名 9名
環境教育 87名 24名 21名 45名 21名 7名 28名 3名 2名 5名 9名

愛教大の結果を他の教育系大規模大学の結果と比較しながら特徴を述べます。

  1. 「教員就職者数」が30%を超え、際立って多いこと
  2. 「一般就職者数」は50%前後と大体同割合であること
  3. 「進学者数」は、北教大を除く他大学に比べ一番低く、大教大の1/3程度であること
  4. 「その他」は、5大学の中で一番低いこと

このように、愛教大の学芸課程は、他大学に比べても学生の「出口」として、十分に機能しているといえるのではないでしょうか。

  愛知
教育大
北海道
教育大
東京
学芸大
大阪
教育大
福岡
教育大
卒業者数 409名 521名 526名 445名 211名
教員就職者数 131名(32%) 107名(21%) 59名(11%) 84名(19%) 37名(18%)
一般就職者数 204名(50%) 284名(55%) 295名(56%) 203名(46%) 104名(49%)
進学者数 28名(7%) 34名(7%) 82名(16%) 87名(20%) 24名(11%)
その他 46名(11%) 96名(18%) 90名(17%) 71名(16%) 46名(22%)

ところで、この会議に先立って、この5大学に奈良教育大学を加えた6大学の学長が集まり2時間にわたって懇談しました。この懇談会では、刷新会議の事業見直しの項目に「国立大学法人運営費交付金」が挙がっていること、教員養成の6年制に関すること、組織の見直しに関する教員養成系大学の改革に関することなど、多岐にわたる事項に関して忌憚のない意見交換を行うことができました。

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