
平成20年度9月卒業式を挙行しました。
平成20年9月30日(火)10時30分
学長告辞
本日をもって教育学部教員養成諸課程を卒業する7人、学芸諸課程を卒業する9人、及び大学院教育学研究科を修了する3人、合わせて19人の皆さん、本当におめでとうございます。心より卒業・修了のお祝いを申し上げます。
皆さんは、それぞれの事情があり、半年間あるいはそれ以上、修了年限を超えて、九月卒業・修了となったことと思いますが、必要単位や卒業研究の単位を修得され、大学院にあっては修士号の学位論文審査に合格され、ここに卒業・修了されるに至りました。こうして、ひとつの区切りをつけ、卒業・修了という目的を達成されたことに対し、心から、「がんばりましたね、よかったですね」という言葉を贈りたいと思います。多くの学友と同時に卒業・修了できなかったとはいえ、これも人生における一つの経験であります。これを一つのバネとして、今後、希望に満ち溢れた人生を一歩一歩着実に歩んでいただきたいと思います。
皆さんは、私がこの4月に学長に就任して初めての卒業生・修了生の方々です。その意味で、ここに皆さんに卒業式・修了式の学長告示を述べることを大変光栄なことと感じています。卒業生ならびに修了生の皆さんは、本学で学びを重ね、クラスの仲間やクラブ・サークルの仲間との友情を育み、充実した大学生活を送られてきたことと思います。学部にあっては、各自の専攻分野の学問の楽しさとともに、その難しさや奥深さを理解されました。大学院にあっては、学部での学びの上に、それぞれの専攻における学問を探求され、その成果を学位論文に結実されました。多くの授業の中で色々な感動を経験し、卒業研究・ゼミ・修士論文作成など、先生方から指導を受け、指導教員との間でも師弟の良き関係を築かれたことと確信しています。
卒業・修了される多くの方は、教員という職業を目指されていると思います。今、日本は教育をめぐって大きく動いています。国際的には、日本の公的教育費支出は、経済協力開発機構(OECD)加盟28カ国で最下位にあることが、先日報道されました。教育をめぐる環境は諸外国に比べ、決して良くはありません。
また、新教育基本法に基づく教育振興基本計画の策定、新学習指導要領の先行実施、教員免許更新制度の実施などなど様々な課題が山積する中で、教員の多忙化も進んでいます。
教員を目指される方は、地に足を下ろし、子供たちと真摯に向き合い、一歩一歩教師としての道を歩み、その足跡を刻まれることを期待します。
また、教員以外の道を歩まれる方々も、本学で培われた学びを土台に、それぞれの分野で、自らを鍛え、その道のエキスパートを目指して、歩まれることを期待します。
さて、今から約250年前、皆様も御存知のフランスの百科全書派の著名なひとりであるジャン・ジャック・ルソーは、その著書「エミール」、この本は本学の永冶日出雄名誉教授も訳者の一人ですが、その中で、こういうことを述べています。「彼が自らの目で眺め、自らの心で感じ、自己の理性という権威によるほかはいかなる権威によっても支配されないようになれば充分なのである。」。ここには、ある意味での教育の目的が語られているのではないでしょうか。
翻って、私が最近読みました「素数ゼミの秘密に迫る」という本があります。これは静岡大学の吉村仁先生が書かれたもので、氏のご専門は数理生態学です。その中で、13年周期と17年周期で大量発生する「素数ゼミ」と呼ばれるセミが、なぜ北アメリカにいるのか、またそれ以外のセミはなぜいないのか、などその秘密を解き明かします。これはこれで面白いのですが、氏は、最後にこういうことを強調されています。「私が素数ゼミの秘密に迫ることができたのは、ふだんから生物の“なぜ”ということに、疑問を持っているからです。」と。また、「憶えるのではなく、自分が納得する、つまり理解して自分の中で体系化することが重要」という指摘です。
私も、この4月の入学式の告示で、「なぜと問う」ことの重要性を指摘し、新入生に強く訴えかけました。
他人の意見をそのまま受け入れるのではなく、その時に「なぜ」と自問し、自らの考え・思想をより強固なものにしていくことこそ、人生の醍醐味と言えましょう。
この夏の猛暑と言い、その後の局地的な豪雨といい、私たちの住む地球は、温暖化ガスの過大な放出をはじめ、大きな打撃を受けているように感じられてなりません。一方では、人の行き来が盛んになり、EUに見られるように、ますます地球規模でのボーダーレス化が進んでいくでしょう。そうした中で、アフガニスタン、イラク、スーダンなど、民族間のあるいは民族を超えた戦争が頻発しています。こうした世界の現実から目をそらすことなく、「なぜ」「どうして」と問い続けてください。初めは取るに足らない小さな芽が、やがて大きなうねり、大木となって世界を動かしていくことを、私たちは歴史から学んでいます。
大学の大きな役割は、成熟した民主主義の社会、持続可能な社会の実現を目指し、人権や平和の担い手を育てることに、その役割があることは、今から10年前の1998年10月9日に出されたユネスコの高等教育世界宣言でも述べられているところです。卒業生・修了生の皆さんは、このことを胸に刻み、様々な「なぜ」の答えを見出すべく、本学で学んだあらゆることを総結集して、ご努力・ご精進をいただきたい。大きく期待を寄せております。
最後に、卒業という人生の区切りのこの時期に、今後の人生設計を立て、それに向けて積極的に、そして果敢に挑戦し、たゆまぬ不断の努力をしていただきたいと存じます。卒業生諸君の今後の大いなる活躍が、本学の今後、そして日本や世界の今後を支える、大きな力になるものと確信しております。
卒業生・修了生諸君の今後のご活躍を祈念いたしまして、卒業・修了式にあたっての告辞といたします。
平成20年9月30日
愛知教育大学長
松田 正久

【告辞を述べる学長】

