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2009年年頭挨拶を行いました。

年頭挨拶を述べる学長

【年頭挨拶を述べる学長】

明けましておめでとうございます。法人化しましてから昨年までは、そちらの席で学長の話を聞いておりました。今年は、国立大学法人愛知教育大学の学長として、2009年の新年にあたり、ご挨拶を申し上げることになりました。まずは、ここに皆様とともに、この場で元気に新年を迎えられたことを喜びあいたいと思います。

4月に学長になって以来、何事をなしえたのか、反省することしきりですが、幸い大変有能な理事の方々、事務局長、学長補佐の方々をはじめ、監事の方の適切な助言など、ここにご出席の皆様に支えられて、これまでやってこられたことに対し、心より感謝申し上げるしだいです。

昨年の出来事を振り返ってみますと、教職大学院の発足が4月にありました。6月末までは、いわゆる概算要求への対応と暫定評価のための報告書作りがございました。そして、評価委員会をはじめとする様々な訪問調査が秋の遅い時期まで続きました。また、第二期中期目標・中期計画策定委員会の立ち上げもありました。そして、この間各種GPへの対応もありました。結果としては、教職大学院GP一件のみに終わったのは、悔しいことでありました。こうした中で、大学改革に関する課題が滞り、皆様に心配をおかけした点があったことは否めません。この点は、今後の重要な課題と心を新たにしています。

昨年は、とりわけ経済をめぐって、年頭から食品の値上げや、ガソリンをはじめとする燃料費の高騰など、私たちの暮らしを脅かす出来事で始まった年でした。これが、9月のアメリカの金融危機に端を発し、瞬く間に世界経済を不況のどん底に至らしめました。日本でも、とりわけ日本を代表する大企業での派遣労働や期間労働の人たちの解雇を中心に、明日の見通しがもてない不安が国民の中に広がりつつあります。国の介入を最も嫌った自由主義経済の国アメリカでは、国の全面的支援を受けての経済立て直しを模索しています。これが、グローバル化であり、国際化であったのでしょうか。グローバル化の元締めである、アメリカでは、「Yes, we can change!」をスローガンにした、アメリカ史上初めての黒人大統領Barack Obama氏が今月20日から政権を担当します。彼は核兵器の廃絶を公約とした初めての大統領です。

5年前の国立大学の法人化も、「グローバル化」の流れの中で行われたとすれば、その責任はいったい誰が取るのでしょうか?法人化についていえば、今一度、国会の付帯決議に立ち返り、法人化の功罪について、きちんと総括し、改めるべき点は改めた上で、第二期のスタートを切るのが当然なすべきことだと思います。国立大学に対しては、厳しい評価がなされますが、根本のところの政策評価がなされないのは、不思議といえば不思議であります。

さて、昨年末に、2009年度の予算の内示がありました。国立大学全体としては、運営費交付金は1%減に抑えられました。文部科学省の努力に感謝申し上げたいと思います。これはこれで、一定の運動の成果であると、評価すべきでしょうが、効率化係数そのものの見直しにはいたっていないのが現状で、依然として財政状況は楽観を許しません。本学に関して言えば、運営費交付金総額では、約52億円、内生活費に当たる基盤的運営費交付金は44.6億円となっています。特別教育研究経費は、法人化後、初めて1億円を超えましたが、国立大学全体での980億円から見れば、0.14%という割合です。しかし、これまで本学が4年間、特色GPで取り組んできた事業が、今回、科学・ものづくり教育推進のための費用として、約5千万円が認められたことは、これまでの活動の成果の評価の結果であることを確認し、これに取り組んできた多くの学生の皆さんや理科・技術・数学の担当の先生方に感謝申し上げたいと思います。来年度以降、この予算を有効に使用し、「科学・ものづくり推進センター(仮称)」を中心に、小・中・高の子どもたちの発達段階に応じたITを活用した理科教材の作成や新たな知見を活かした教材の開発、訪問科学実験やものづくり教室などの更なる発展を通じて、本学の特徴を出していきたいと考えています。また、現代GPを引き継ぐ外国人児童の学習支援も、今年に続いて来年度も予算が確保できましたので、より一層充実した取り組みに発展していってほしいと願っています。施設整備は、附属高校等が補正で措置されましたので、本予算は残念ながらつきませんでした。今後は、本部棟をはじめ、残り20%の耐震改修を実現するとともに、老朽化した建物の大型改修を進めていかねばなりませんし、研究設備の更新も課題です。2009年度は、第一期の中期目標・中期計画の最終年度ですので、昨年12月16日で承認された07年度の目的積立金を含め、有効に使用していくことが求められます。

今年は、4月までに、第二期中期目標・中期計画の素案を作成し、6月末までに策定していかねばなりません。なかでも、「大学の機能別分化」を図る中で、明確に本学の特徴を出していくことが求められています。「機能別分化」は、2005年1月の中教審答申「わが国の高等教育の将来像」ではじめて提言された概念です。これは、この12月答申「学士課程教育の構築に向けて」とあわせて、私なりに解釈すれば、本学のあり方として、教員養成系大学という横並びではなくて、その中でも地域や入学してくる学生の特性に対応した大学としての特色ある目標・計画が求められているということです。また、今まで以上に学長のリーダーシップが求められていることが、昨年末の国大協の会議でも強調されていましたが、前から申しているとおり、ボトムアップとトップダウンの調和を大切にして、いい意味での学長のリーダーシップを発揮しながら、本学の改革ビジョンを示していきたいと考えています。そのビジョンそのものが、その進捗とあわせて評価されて、運営費交付金が決まるという、そうした仕組みが第二期には用意されているように感じています。その意味で、第二期中期目標・中期計画の中身が鋭く問われるわけで、その交渉が早々に始まります。

本学は、この5年間、学生を中心に据えて、その学習環境の整備に力を注いできました。いわば、今後の財政逼迫を見据えての先行投資をしてきたわけですが、これだけでは十分ではありません。外枠が整備されても、教育課程や教育内容そのものの向上がなければ、本質的な意味での教育の向上は望めません。これまで、研究機能を維持発展させる観点から、財政的には教育研究経費を最大限保証するという方針でやってきました。それが、「当たり前」ということにならないよう、ある種の緊張感のもとで、先生方には「成果」を出していただきたいし、その責務があると思っています。そうした点で、先生方には、意識改革や改善をお願いすることにもなりますし、事務職員の方には、何よりも学生目線にたった対応を不断にお願いすることにもなります。どうかよろしくお願いいたします。

さて、今後の課題をあげますと、まずは、教育課程の改革です。「学士課程の構築に向けて」の中教審答申への対応です。アドミッション、カリキュラム、ディプロマの各ポリシーの一層の明確化と、とりわけ学士の質保障の課題です。これに向けた改革は急務でありますし、9月の文科大臣の中教審への諮問「中長期的な大学教育のあり方について」への対応も急ぐ必要があります。また、来年度から免許状更新講習も始まりますし、教職実践演習の本格実施に備えた試行も準備しなくてはなりません。教職大学院も完成年度に入ります。教員養成課程にあっては昨年以上に教員の採用率を増やすと同時に,優れた資質を有する教員の養成に努めなくてはなりません。現代学芸課程も3年生となり、その出口へのきめ細かい対応が求められ、いよいよリベラルアーツ教育の成否が問われる年でもあります。こうしたさまざまな課題に対応していくためにも、学生定員の見直しを含め、教育課程・教員組織の見直しに早急に着手し、結論を出していくことが必要です。一刻の猶予もないと感じています。国を挙げての留学生30万人計画に対応した国際化の推進も急務です。又、附属学校の改革について、国立大学法人評価委員会でも議論が出ていると伺っていますが、これは、あり方ワーキングを立ち上げましたので、その結論を踏まえて改革を行うこととなります。AUEは、 Aichi University of Educationですが、わたくしは、AUEをActive and Unique Educationをすすめる大学としていきたいと思います。

今年の秋には、創立60周年の記念行事も計画しています。また、これから一般選抜入試をはじめ、新入生を迎えるための諸行事と卒業生を送り出すための各教育課程の取り組みで、忙しくなります。入試でのミスはあってはならないことです。また、学生諸君が、この大学に学んでよかったという気持ちを持って卒業していただくためにも、最後まで学生の教育に精一杯当たっていただきたいと念じています。幸いこれまで本学学生には内定取り消しは出ていないと伺っています。きめ細かい学生の方々へのケアをお願いします。また、総務担当理事の下で、事務局長以下事務局の協力を頂き、はじめて専門職としての広報担当職員1人、情報担当技術職員2人を4月から採用することとなりました。3人のうちお二人は、民間で長らくそれぞれの専門のお仕事をされてこられた方々です。いい意味で、これらの方々の採用が、本学を活性化する一助となることを願っています。

昨年は、南部、小林・益川、下村の日本の4人の方がノーベル物理学賞や化学賞を受賞されるといううれしいニュースもありました。また、歴史上4人の方がノーベル賞を2回受賞していますが、その中で最初の人であり、女性ではただ一人の受賞者マリー・キュリーは、「国民の文化の程度は、国民の教育に使われる予算の割合によって決まる。」と信じていたそうです。そうであれば、にもかかわらず、わが国の文化の程度は残念ながら、きわめてお粗末というしかありません。

2009年は、世界天文年ですが、皆様ご存知の近代科学の祖であるガリレイが、1609年、今では、木星の衛星は63個発見されているそうですが、4つの惑星、イオ、エウロハ、ガニメデ、カリストを自家製の望遠鏡で発見し、太陽の黒点を観測し、地動説を確信した年から400年の記念すべき年です。この1月4日には、澤自然科学系学長補佐による今年最初の天文教育講座も本学で開催され、好評でした。また、今年は、チャールズ・ダーウィンが誕生して200年目に当たり、彼が「種の起源」で自然淘汰説、進化論を展開してから150年の節目の年でもあります。ポアンカレが「科学と方法」を出版したのは、今から100年前のことです。

私は、昨年、本学で開かれたいくつかの学会の挨拶の中で、私の師でありました故小川修三や小林・益川両氏の師でもありました、故坂田昌一先生の、40年前の論文「平和の論理の創造と科学者の社会的責任」から、「なによりもまず科学者自身が哲学の貧困を克服し、自然と社会の全域を見透す能力を取り戻さねばならない」という言葉を引用しました。哲学の貧困を克服し、自然と社会の全域を見透す能力を持たねばならないことは、これからの子供たちの人格発達とそれを支える学校や社会の在り方を考える上で、なによりも私自身が自戒しながら、このことを考えていかねばならないと思っています。

最後に、今年が、少しでも明るい年になることを願って、そして職員一同、心身ともに健康な中で、学生の方々の教育や支援をおこなえるよう、また教員の方々に対しては、一人一人の教育研究の飛躍的発展を願って、学生の皆さんにあっては、この大学で学んでよかったと心から思っていただけることを願って、国立大学法人愛知教育大学長としての私の年頭の挨拶といたします。

国立大学法人愛知教育大学長
松田 正久