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2010年年頭あいさつを行いました。

あけましておめでとうございます。今年は特別休暇も前後各一日あり、皆様比較的ゆったりとした正月を過ごされたのではないかと思います。2010年の新年をこうして皆様とともに迎えることができたことは誠に喜ばしいことです。年初に当たり、国立大学法人愛知教育大学学長としての年頭の挨拶を申し上げます。

昨年度に本学創立60周年を迎えましたが、2010年度は、この井ヶ谷の地に統合して40周年を迎えます。学校現場の先生では、統合とともに1970年度に入学した方々は、2011年度が60歳ですので、本学の卒業生も刈谷で多くの時間を過ごした方々が定年を迎えられるわけです。

年頭あいさつをする学長

皆様ご存知のように、一昨年秋のリーマンショックが世界経済の大不況を引き起こす中で、人々は「CHANGE=変化」を求め、そうした期待を背負って、昨年はアメリカのオバマ大統領の就任式から始まりました。彼は、4月のプラハでの演説で「核廃絶に向けた行動」を宣言し、その一言で昨年度のノーベル平和賞を受賞しました。一方、わが日本でも、「変化」を求め、8月の総選挙では国民は65年ぶりに「政権交代」を選択し、民主党を軸とする鳩山新内閣が誕生しました。世界全体がある種の「変化、変革」の中にあることを示した1年でした。

世界中の期待の中で誕生したオバマ政権は、ノーベル平和賞授賞式では、「正義の戦争」を容認し、アフガン増派を行い、軍事的支配を強化しようとしていますし、パワーポリティックスから抜け出てはいないようにも見えます。昨年来の新型インフルエンザの流行も、社会基盤の脆弱性を顕在化させました。また、コペンハーゲンでの昨年末の気候変動に関するCOP15は、多くの人々の期待を裏切る結果となりました。ハーバードの二―アル・ファーガソンは、「我々は西欧文明の終末期に生きているのか」と問題を提起しました。中国やインドの台頭で、世界の経済秩序も大きな変化の中にあります。今や、G8の時代ではなく、G20やBRICSの時代に入ったといわれています。

こうした変化の中で、鳩山新内閣は、2010年度予算編成の中で、事業仕分けなる手法を導入し、予算編成の透明化を志向する中で、一定の評価はできることでしたが、しかし、高等教育の見直しができたかというと、残念ながらそうではありませんでした。また新政権下での高等教育・大学政策が示されていませんが、高等教育の大部分を私学セクターに委ねている国は日本と韓国だけです。しかし、韓国は、国立大学、国立の教育系大学のインフラ整備に相当の投資をしていると、昨年いくつかの教育大学を訪問して実感しました。年末にかけて、教育系大学のインフラ整備をお願いしてきましたが、なお道遠しという感じがします。我が国の人口は、2050年には低位推計では1960年の水準の9000万人に下がりますが、当時と決定的に違うのは、子どもの数が格段に違うことです。1960年には0歳から14歳までの人口は2800万人であったのが、2000年には900万人、2050年予測では750万人と約4分の1になると予想されていることです。こうしたことを考えると、一人ひとりが十分な教育を受ける環境を整え、国際的にも高い能力を発揮できる人間の教育を行う以外に道はないことがわかります。そのためにも高等教育は国の責任において無料で行うための環境整備、国立大学への投資が必要なことは申すまでもありません。必然的にヨーロッパ型の社会を志向する社会構造の変革が必要だろうと思います。こうしたことから、高等教育の無料化を宣言した国際人権規約第13条の批准が必要であると訴えてきましたが、これを批准していない国は日本とマダガスカルだけです。是非早急に批准してほしいと思います。

12月末に決定された来年度予算は、史上最高の一般会計92兆3000億円、一般歳出53兆5000億円となり、その中で運営費交付金は0.94%、110億円減となりました。すでにこの5年間で720億円の減少でしたが、それにこの金額が上乗せされることになりました。1月に入っても、本学に対する予算示達は今の時点では来ていません。しかし、運営費交付金は、人件費の80%相当ですので、本学の運営は、人件費を含めて授業料等納付金に大きく依存しています。この点からも、学生第一の大学運営が重視されなくてはならないと思います。

まず、今年以降の高等教育、とりわけ教員養成をめぐる問題についてです。民主党はマニフェストの中で、教員養成制度の抜本的見直し、すなわち6年制による教員養成を掲げ、この1月からの検討会議の中で法制化を来年の1月の通常国会で図る計画を示しています。ご存知のように、日本教育大学協会では教員養成政策特別委員会を昨年末に作り、二つの部会で、2月の理事会に向けて精力的に議論を行っています。この問題は、現在の教員養成の仕組みをどのように総括し、どの点を改め、どのような将来像の元に、教員の専門職化・高度化を図るのかの視座から検討を進めねばなりません。私は、きちんと私ども教員養成系大学の意見を反映させる中で、新しい制度化をはかる仕組みづくりが必要であると思います。

あいさつを聞く役員,職員

本学固有の問題ですが、昨年10月に発足した教育創造開発機構の役割を一層明確にし、全国に存在感ある中部地区の中核的教育系大学として、その充実に努めたいと思います。多忙な中でセンター長や専担・兼担教員を引き受けていただいた教員の方々には改めてお礼を申し上げます。また、現在、11月に発足の博士課程設置準備委員会において、静岡大学との共同大学院制度を活用して、博士課程設置に向けた検討を進めています。東学大と大教大に修士課程が1966年に設置され、三番目に本学にできる1978年までに12年を要した状況に似ています。東学大と兵教大に連合博士課程が設置されたのは1996年ですので、それから14年が経過していることになります。教員養成の高度化のためにも、新しい形での博士課程の本学への設置を進めたいと思います。国立86大学中、博士課程を持たない大学は、教員養成系7大学のみになりつつある状況の中で、他の教育系大学とあいさつを聞く役員,職員も協力しながら博士課程の実現に向けて頑張る覚悟です。また、もう一つは、教育組織・教育課程の改革です。教員養成課程にあっては、新政権の教員養成政策と関連してきますが、現在のように初等・中等など4課程での体制を見直し、小・中の1種免の必修化を含め、教科別と教育課題などを中心とする課題別の教育組織に再編するなど、大学改革推進員会を中心に、結論の迅速化をはかります。また、現代学芸課程にあっては、その役割の明確化を進め、学部化の可能性も含め、学芸教育を進めるにふさわしい教育課程に必要な組織の再編を進めます。これらのプロセスを進めるにあたっての原則は、教育組織の効率化、たとえば、単位組織の学生数最低30人にするなどですが、こうした原則の下に進めることです。教員のニーズに合わせた学生組織ではなく、広く社会に必要とされる教育、教員養成を進めるための学生組織にすることです。そして、機能別分化・個性化を進める中で時代を先取りする教員養成教育・学芸教育を本学に展開することです。これに向けて、リーダーシップをとって行きたいと、強く決意しています。

附属学校の改革も焦眉の課題です。今や、地域のみならず全国に存在感のある付属学校でなくては、その存在説明は通用しない状況も出てきています。時代を先取りする試みを大胆に展開するなど、「学長のリーダーシップによるマネージメント機能を強化」とした中期目標に沿って、「国レベルをはじめ地域の教育課題の解決と学校教育の発展に寄与する」附属学校に改革していきます。

こうした課題を達成していくためには、事務組織の改革も欠かせません。日常的にルーチンの仕事を進める一方、新しい時代に即した事務組織のために、大胆な改革も避けて通れません。すなわち、今までのような縦割りの下での組織を見直すことです。必要な部分は残しながら、できるだけ横に広がった組織をどのように構成し、一人一人の能力が最大限発揮できるにはどうすればよいか、皆さんのアイデアも活かしながら、事務局長と協力しながら大胆な組織改革を進めたいと思います。

この4月から、新たな中期目標・中期計画期間に入ります。承認・認可されるであろう第二期中期目標・中期計画が、本学の進むべき方向を示しています。今、策定委員会において、2013年度までの4年間のアクションプランを策定中で、これは具体的な数値目標を掲げていますし、1月の教授会には報告できるよう検討を進めます。

さて、皆様の労働環境の整備ですが、大学がどういう方向に進もうとしているか、どうしたいのか、役員の意向が十分伝わってこないという声を耳にします。私どもは決して、そういう方向を志向しているわけでは断じてありませんが、虚心坦懐にこうした声に耳を傾け、役員一同、皆様との対話が進むよう積極的に皆様の中に入るようにしていきたいと思います。今年度は、臨時的措置として地域手当を9%支給しましたが、人事院勧告に従えば、2010年度は12%ですが、これは今の財政状況では難しいと認識しています。しかし、できるだけ9%支給が継続できるよう、がんばってみたいと思っています。また、4月から労働時間は一日7時間45分に短縮します。これが、結果として残業代のアップにつながらないような努力をしっかりとお願いしたいと思います。事務局長や部長課長と相談しながら、労働時間管理をより厳しく行いたいと思います。

また、教員の方々に対しては、基盤的教育研究費の配分を維持できるよう最大限の努力をする所存です。他の大学では、本学の半分以下の大学も多いと聞いています。本来は科研費に頼らなくても研究が遂行できるのが基本だと思いますが、そうでなくなってきているのがこの間の我が国の現状です。積極的に教員の方々には、新規申請数が来年度こそ100件を超えるよう、今から準備をしていただきたいと思います。また、不況の中での学生の生活状況や就職状況把握など、一人ひとりの学生に目を向けたきちんとした対応をお願いします。事務の方々も、データ把握にずいぶん苦労をされていましたので、こうした点は、是非改善していただきたいし、研究者総覧や評価書の提出など、きちんと守っていただきたいと思います。

全国的には、大学間の再編・統合を巡る様々な動きがあるようです。教員養成を巡る動きも急な展開を見せるかもしれません。重大な危機が迫っても、「まさか」そんなことは起きないだろうと危機的な現実を直視したがらないのが人間という種の性なのだそうですが、「まさか」は必ず起きることを前提に、対応すべきという趣旨のことを、先日の毎日新聞が書いていました。何事が起こっても、その時点での最善の選択を出来るように、そのための教職員の英知が発揮できる環境の整備をしっかりとやっていきたいと思います。

以上で、2010年1月5日,仕事始めに当たっての挨拶といたします。本年もどうかよろしくお願いいたします。

平成22年1月5日
国立大学法人愛知教育大学長
松田 正久