
平成21年度入学式を挙行しました。
平成21年4月3日(金)
学長式辞

教育学部では3年次への編入学3人の方を含めて教員養成四課程712人、現代学芸課程254人の合計966人、特別支援教育特別専攻科及び同一年課程34人、そして大学院教育学研究科修士課程117人、教育実践研究科専門職学位課程27人、総計1,144人の皆さんの愛知教育大学への入学を許可いたしました。この中には、外国人留学生が、学部に1人、大学院に11人併せて12人、内訳は、中国から9人、ミャンマーから 1人、カンボジアから2人がおられることを紹介しておきます。また、ご都合があってこの入学式に出席できない現職の先生方21人の大学院入学式は、夕方行いますので、総勢1,165人が、今年度本学に入学される方々です。
本学のキャンパスを彩る様々な木々も芽吹きの時を迎え、講堂前のケヤキも、新緑の輝きを増し、バス停から続く桜並木も満開の時を迎えました。今日の入学式は、本学が1949年に創設されて丁度60回目の記念すべき入学式となりますが、幸い晴天に恵まれました。国立大学法人愛知教育大学の役員、教職員、並びに在学生を代表して、心から入学のお喜びを申し上げ、歓迎の意を表します。本当におめでとうございます。また、式にご列席いただきましたご家族の皆様にも、心からお祝い申し上げます。
私事で恐縮ですが、最初に学長松田正久の自己紹介をします。皆さんの多くが学ばれる4年間に1年を加えた5年間、学長としてお付き合いさせていただくことになりますので、学内で出会った時には、気軽に声をかけていただくよう、よろしくお願いいたします。私は講義も持っておりませんので、学生の皆さんと直接出会う機会は少ないですから、この際しっかりと私の顔を記憶にとどめておいてください。私の専門は、物理学で、その中でも素粒子論という分野を専攻しています。この分野で、私の先輩であります益川・小林の両先生がノーベル物理学賞を受賞されましたので、素粒子論という言葉はお聞きになったことがあろうかと思います。お二人の先生の業績は、なぜこの宇宙が存在するかという根源的謎に迫る大きな手掛かりを与えてくれるものです。物質は何からできているだろうか、力とは何だろうか、との疑問は、古くから人々が取り組んできた問題です。いわゆる、原子論は、古代ギリシャに芽生えました。エピクロスとかデモクリトスとかが、発案者といわれていますが、もともとアトムとは、「これ以上分割できない」という意味です。当時は、あくまで一つのアイデアにすぎなかったのですが、今では、私たちは、アトムはアトムにあらず、原子を構成している原子核の陽子や中性子もクォークという基本粒子からなっていることまで理解できるようになりました。こうした、力の起源や物質の構成要素のあり方を研究してきました。
このたび、皆さんは新たな気持ちで、それぞれの教育組織の修業年限に応じて、本学での大学生活を送られることになります。
最初に国立大学の意義についてお話ししたいと思います。大学の歴史を紐解きますと、Universityに繋がるラテン語のUniversitasと呼ばれたものは、今から約920年前の1088年頃のイタリアのボローニャ大学が始まりといわれています。約900年の歴史があるわけです。日本では、大学ができたのは、1877年の東京大学が始まりですから、約130年の歴史です。この間、大学は一部のエリートのための存在から、同年代の50%を超える人たちが入学する、いわゆるユニバーサル化を経て、マス化の時代に入ったといわれます。現在は60万人を超える人々が大学に入学します。このうち、国立大学は、学部で約10万人ですから、17%弱の人たちしか国立大学には入学しません。憲法や教育基本法で保証された高等教育の機会均等を果たす役割、公共的性格を国立大学は持っていることを指摘したいと思います。国立大学は、運営費交付金という形で国から補助金を受け取り、皆さんの授業料等と合わせて、それを大学運営の財政的基盤としています。この割合は本学の場合、大体5:2です。国立大学は、憲法等に定められた教育の機会均等の実現のためにはなくてはならないもので、国の補助を含め一層の充実が必要だということを最初に確認したいと思います。
次に、大学運営への学生参画の課題についてです。さて、皆さんにお渡しする冊子「学生生活」の1ページの「愛知教育大学憲章」の中で、教育目標として、学部教育では、教養教育を重視し、教員養成課程では、平和な未来を築く子どもたちの教育を担う優れた教員の養成、現代学芸課程では、広い教養と深い専門的能力を持った教員を含む多様な社会人の育成が謳われています。大学院では、学校教育に求められるさらに高度な能力を有する教員の養成と教育の専門家の育成、再教育の場としての教師教育の質的向上を謳っています。また、「愛知教育大学の運営のあり方」として、「2.学生参画の保障」では、「愛知教育大学は,学生の学修活動を支援し,教育改善への学生参画を保障する。」と宣言しています。大学の教育は、教員が一方的に与えるものではなく、そこでは学部学生や大学院生の「考え」も取り入れながら、教員と学生の双方で作り上げていくものです。本学でも、憲章の精神に沿って、「全学会議」を設け、今年度は7月1日水曜日の午後開催することが決まっています。また、「教務企画委員会」や「学生支援員会」への学生参加を保障しています。こういう場を通じて、「教育」の在り方について、学生諸君と教員との活発な意見交換ができることを期待しています。また、他大学にはないユニークな取り組みとして、学生諸君が独自に「子どもまつり」を毎年春と秋に開催し、地域からたくさんの子どもたちが参加する教育大学ならではのイベントがありますので、新入生の皆さんも是非参加してください。
三つ目は、教養教育についてです。先ほど、本学は教養教育を重視している大学ということを述べました。そこで、愛知教育大学に入学された皆さんが、大学において獲得すべき「教養」とは何かについて、少し話したいと思います。私がここでいう「教養」は「リベラル・アーツ」の意味で用いていますが、これも直訳すれば「自由学芸」となります。もともと、古代ギリシャ、あるいは古代ローマから、「リベラル・アーツ」は、「自由人の教養」の意味で用いられ、中世ヨーロッパの大学では「自由7科」として教授されました。三学が文法・修辞学・弁証法(論理学)、四科が算術・幾何・天文・音楽です。哲学はこの自由七科の上位に位置し、自由七科を統治すると考えられていました。さまざまな桎梏から解き放たれて、自由な学問を通じて、現実の世界を超越し、さらに大きな世界があることを知ることは、人格の形成のうえで欠かすことのできない「教養」といえるものです。私は、とりわけ教員を目指す方々にとって、「リベラル・アーツ」の素養は欠かせないものだと思っていますし、「現代学芸課程」を設けているのも、リベラル・アーツ教育を重視している本学の特徴だと思ってください。
皆さんは、これまで学んできた教育の中で獲得したものではいかに不足しているかにすぐに気づくはずです。その時、皆さんの「知ろうとする努力」を、学問の場を通じて提供できる大学であるかどうかが問われます。大学では、皆さんは、自らの頭で考え、毎日を過ごすことが可能となる「自由」な立場です。授業を受けるということは、それだけでは、主体的な行動ではありません。しかし、その場で提供される授業は、高校までの授業とは大きく違っているはずです。「だが、しかし」「何故」と発することが可能な「学問」をする場として、大学は授業を提供します。そこに、主体的な取組の場、学びの場が成立すると私は考えています。どうか、入学後は、自ら社会の中での自分の位置を獲得していくための努力を主体的に行ってみてください。愛知教育大学は、そのための援助を惜しみません。
四つ目は、現代の諸問題と大学の機能についてふれたいと思います。現代の諸問題の一つは、世界各地で頻発している戦争や紛争の問題です。東西冷戦が終わって20年になりますが、イラク、パレスチナ、アフガニスタン、アフリカの各地などなどでの紛争あるいは核兵器やミサイル開発に象徴される戦争の問題です。もう一つは地球温暖化に代表される地球的規模での環境問題です。日本で最初のノーベル賞受賞者である故湯川秀樹博士、もちろん名前はご存じでしょうが、博士は、皆さんが生まれるずっと昔の、1955年に核兵器の廃絶を求める「ラッセル・アインシュタイン宣言」の世界的に著名な共同署名者11人の一人でした。また、その後博士は、パグウォッシュ会議や科学者京都会議などの指導者となり、益川・小林両先生の師であった坂田昌一博士らとともに平和を希求する科学者としての生きざまを私たちに強烈に与えてくれました。博士は、「新しい時代の良識が、権力あるいは知識・技術をもった少数者を動かすという方向に進まねばならぬのである」と、未来を予言し、21世紀も10分の1が過ぎた今、私たちは、このことがまさに現実となる時代に生きていることを確信したいと思います。アメリカでは、核廃絶を初めて公約したバラク・オバマ大統領の誕生がこのことを如実に示しているように思えます。
日本国憲法23条にある「学問の自由は、これを保障する」を引くまでもなく、学問の自由及び教育の政治的宗教的権力からの独立は、教育研究をその存在基盤とする大学に不可欠なものです。長年にわたる歴史の中で獲得されてきた学問の自由と教育の独立の概念に支えられた大学は、イデオロギーを超えて、社会に警鐘を鳴らし、社会の進むべき道を指し示す道標の役目を担っていると思います。人類の歴史や文化に学び、現在の矛盾、この大きな課題のひとつが環境問題であることは言を待ちませんが、これを解決する手段や方法など、「知の創造」を行い、その成果を、未来を担うあなた方に、継承していくこと、すなわち「知の継承」が、大学人に求められている機能です。この意味で、愛知教育大学は、一人ひとりの教員の「知」を、大学での講義・演習・実験・ゼミナールなどあらゆる場面を通じて継承してゆくことを宣言します。
最後になりますが、学部の新入生の方は4年間、修士課程に入学の方は2年間、愛知教育大学で、「学問」を究める機会を得られました。皆さんの「学び」の軌跡を、この期間を通じて、しっかりと刻み、描いていただけることを期待しています。そして、何年かたった後に、愛教大で学んでよかったと思えるような学生生活を送っていただきたいと願っています。
国立大学法人としての第一期中期目標期間は今年度で終わり、来年度から第二中期目標期間の6年間が始まります。先日、国立大学評価委員会の第一期の評価結果を受け取りました。本学は、教育・研究・業務運営などすべてにわたって、「良好」もしくは「おおむね良好」の評価でした。自然環境は、他の大学にも負けないと自負していますが、この環境を活かしたアカデミックな雰囲気あるキャンパスづくり、持続可能な社会の実現に向けてのさまざまな試みをなしていくことが、次の本学の目標です。
様々な課題の解決は、あなた方の世代に託されています。本学教育学部及び大学院等で勉学する機会を得られた新入生のみなさん、学びの充実とともに、大学生活を楽しみ、本学の魅力ある大学づくりに参画されることを大いに期待しています。貧困・格差など課題が山積している中、この社会を少しでもより良くする知の力と行動力とマインドを本学で身につけ、今後の人生選択のよりどころとしていただき、本学での充実した学生生活を送ってくださることを期待し、そのための支援を大学として約束し、入学式にあたっての式辞といたします。
平成21年4月3日
愛知教育大学長
松田 正久
カテゴリ:イベント|掲載日:2009年04月08日

