第4節 教員養成における支援の特色 1.教員養成系大学に期待される役割 厚生労働省(2016)が発表した平成27年度の障害者雇用状況をみると、現在教員として働く障害者は約14,448.5名で、実質雇用率は2.18%(都道府県教育委員会2.20%、市町村教育委員会2.08%)であり、まだまだ国が定めた法定雇用率2.2%には及ばず、都道府県では47機関のうち12機関が、市町村では78機関のうち13機関が未達成だと報告されています。 各教育委員会が法定雇用率を達成するためには、教員採用試験における支援体制を整備することに加え、障害のある人がもっと教員免許を保有でき、教員採用試験に臨めるようにすることも重要です。障害のある人が教員免許を得るには、教員養成系大学(各教育大学や教育学部を含む)等で学ぶ必要があるので、各教員養成系大学には、そのような学生にもアクセシブルな教員養成カリュキラムや、各学生からの要請に応じた合理的配慮を提供することが求められます。 2.障害のある教員に期待したいこと 教員は子どもたちの教育に携わり、日々、教科指導、学級経営・生徒指導、進路指導・キャリア教育、部活指導等に関わります。障害の有無に関わらず、教員にはこうした業務を遂行するためのスキルが求められます。障害のある教員には、その障害特性上、やりにくい業務があると考えられがちですが、障害のない教員にもむずかしいことはあります。障害のある教員と障害のない教員が互いに補い合うことで教育の質も高まるはずです。 たとえば、障害のある教員は、小学校、中学校、高等学校の児童生徒にたいし、障害のない教員よりも当事者目線でリアルな福祉教育ができるので、学校教育における共生文化の担い手となることが期待されます。また、特別支援学校の児童生徒にとっては、同じ立場の大人としてロールモデルとなり、キャリア教育をすることができます。これは障害のない教員だけではできない内容です。 3.教員養成系大学における支援の特徴 障害のある学生のなかでも教員を目指す学生は、教員免許を取得するために、他の学生とは異なった修学支援を必要とします。たとえば、小学校教員の免許を取得するためには、小学校全科に対応した体育・音楽等の実技系科目、教育実習のカリュキラムを履修しなくてはなりません。また、実践的なスキルを身につけるためにボランティア等の教育臨床の体験が求められることも多いです。更に、企業就職とは異なり、教員採用試験に向けた就職活動など、総合大学と比べて特徴的な支援内容が多々あります。 障害のある学生の修学支援については、日本学生支援機構(2015)がガイドブックを発行していますが、教員養成に対応した修学支援内容については情報が不十分です。 そこで、本ブックレットは障害のある学生が教員養成系大学に入学したときに、大学がどのように修学支援をすればよいかに焦点を当て、その考え方や具体的な支援事例を、障害学生支援に関わる大学の教職員(たとえば、支援担当者、授業の担当教員など)に提供することを目指しています。