HATOプロジェクト大学間連携による教員養成の高度化支援システムの構築
-教員養成ルネッサンス・HATOプロジェクト-

文字サイズ
検索

教員養成系大学における障害学生支援ブックレット

第Ⅲ章 コラム2(視覚障害のある学生)

名前 佐川 匠(34歳) 視覚障害(弱視・拡大文字使用)
学歴 宮城教育大学大学院 障害児教育専修修了
職歴 福島県立視覚支援学校(教職暦10年)

1.はじめに

私は、先天性白子症のため、弱視です。視力は両眼共に0.1で、視力測定の一番上の指標が見える程度です。まぶしいところが苦手で、明るいところでは視力が下がるため遮光眼鏡を使用しています。平成13年度から大学と大学院の計6年間、宮城教育大学に在籍し、小学校と、幼稚園、盲学校、養護学校の教員免許を取得しました。大学院修了後に、地元福島の特別支援学校の教員として採用され、知的障がい特別支援学校で4年間勤務したあと、現在の職場に転勤してきました。採用から現在に至るまで、小学部の教員として日々、子どもたちの支援指導に携わっています。

2.在学時、あってよかった支援

在学中、教育実習中の配慮がたいへん助かりました。私は小学校や特別支援学校で合計4回の教育実習を行いました。教育実習では、実習日誌や、指導案など手書きで提出するものをパソコンで作成することを認めていただいたり、実習担当の先生と打ち合わせをとる機会や、実習に入る学級で自分の見え方について説明する時間を設定していただいたりしたことでスムーズに実習に取り組むことができました。こうした経験を通して、教職の仕事に就いたとき、自分に何ができるのか、できないことは何なのかについて知る良い経験になったと思います。

3.在学時、あったらよかった支援

私の在学していた当時は、支援が必要と感じたときに、自分から講義や実習にたいする支援の交渉をしていました。小学校や幼稚園の単位を取得するためには、実技をともなう講義も多かったのですが、シラバスを確認し、視覚障がい教育専攻の教官や、講義ごとの担当教官にたいして、支援内容や配慮方法について相談しながら講義を受講しました。家庭科の裁縫や、社会科の地図を使った課題などの同じ速度で取り組めない課題は、後日、課題を提出できるようにお願いしたり、理科の実験や体育の実技では、友人とペアで取り組ませてもらったりなど、必要に応じて対応してもらいました。その都度、自分の障がいのことや支援内容などの説明や交渉をしなければならなかったことや、友人に支援を頼むというところでいろいろ考えることもありました。現在、多くの大学で行われているような、相談や、連絡調整、情報保障のための技術的支援などを担ってくれるような障がい学生支援のシステムが機能していれば よかったなと感じています。

4.教師を目指す後輩と、その支援者へのメッセージ

学生として学ぶうえで、障がいに基づく種々の困難について、配慮を受けながら学びを実現するために、今後も障がい学生支援が充実していくことが望ましいと考えます。ただ、教師になり子どもを支援する立場になったときに、すべてが保障されているとは限りません。自分の障がいについても、担当する児童の保護者への説明責任もあると思います。
私は、知的障がいの特別支援学校の教員だったころ、保護者から私の視覚障がいについて指摘を受けました。そのころはどうすることもできずに目の前の児童の支援指導に打ち込むしかありませんでした。ただ、児童が成長し、できることが増えたとき、保護者との関係が良好になりました。その経験をとおして、教師として真摯に仕事をすることで、障がいの有無は関係ないと自分に自信をもつことができました。何より今の自分があるのは、学生時代、勉強やサークル活動、バイトなどの経験をとおして、自分の可能性について向き合うことができたことが大きいと感じています。学生のみなさんも、いろいろなことに挑戦して、たくさんの人とかかわりをとおして、自分の可能性を広げていってほしいと思います。

ページトップへ戻る