HATOプロジェクト大学間連携による教員養成の高度化支援システムの構築
-教員養成ルネッサンス・HATOプロジェクト-

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教員養成系大学における障害学生支援ブックレット

第Ⅳ章 第5節 宮城教育大学

1.支援体制・支援サービス

従来から聴覚しょうがいのある学生を含めた学生団体による支援が行われていましたが、平成16年度に推薦入試で聴覚しょうがいのある学生を受け入れたことを機に、「障害学生支援プロジェクト」が発足し、大学によるしょうがい学生支援体制の検討が始まりました。その後、平成19年にしょうがい学生支援コーディネーターが配置され、平成21年にしょうがい学生支援室が開室しました。視覚しょうがい、聴覚しょうがい、発達しょうがい、肢体不自由、病弱・虚弱の各しょうがい部会が設けられ、専門の教員が部会長となりコーディネーターと共に対応にあたっています。本学には、全障害領域の特別支援教育の教員免許状を取得できるカリキュラムが備わっていることもあり、教員の専門性がしょうがい学生支援の大きな助けとなっています。
支援申請をする学生の特徴として、障害者手帳の所持や医師の診断により入学前から支援の必要性を申し出る学生と、入学後に教員など周囲の働きかけによって来室する場合とがあります。後者に関しては、比較的軽度のしょうがい学生に多くみられ、1 年次の必修科目である体育実習における実技面での配慮や、英語のTOEICの受験措置などをきっかけに来室へとつながっています。初年次に学生とのつながりを持つことで、その後の介護等体験や教育実習における配慮についても、早期から大学側と情報を共有し備えることができます。また、支援にかかわるボランティア学生については、全学生数の1割弱にものぼり、それらの学生の所属専攻も全専攻の7割強を占めています。このことからも、しょうがい学生支援が特定の者によって行われる特別なものではなく、多くの教職員、学生の支えによって日常的に展開されているということができ、小規模大学の教員養成大学の本学が実現し得た一番の特徴だと感じています。この学生ボランティアは、無償の活動として支援を担っています。多くの学生が、将来は教員としての道に進みます。しょうがいのある児童・生徒を受け持つ可能性に備え、様々なしょうがいのある学生との協働の取り組みの中から、経験を通して、支援に関する確かな学びを得る機会になればと考えています。

「しょうがい学生支援室の体制」の図

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※しょうがい学生支援室には、室長である連携担当副学長、副室長、室員及び専門部会長(7名)、職員のコーディネーター(3名)が配属されている。このうち、室員及び専門部会長には、特別支援教育総合センター教員・支援室担当教員等が含まれる。しょうがい学生支援室の下には、視覚しょうがい部会、聴覚しょうがい部会、発達しょうがい部会、肢体不自由部会、病弱虚弱部会が設置され、学生ボランティアが参加している。しょうがい学生支援室は教育実習委員会、学務委員会、学生生活委員会(学生相談室)と連携もとっている。しょうがい学生は職員のコーディネーターに支援の申し出をすると、このような支援体制により支援が提供される。

2.特色ある支援活動

(1)継続的なFD研修会の実施

平成25年度より、大学主催のFD研修会において、しょうがい学生支援に関する研修を行っています。平成28年度は、合理的配慮に関する事例を検討するワークショップを行いました。参加者同士活発に意見を交し合う中で、教職員としての視点やアイデアが多く語られており、日常的に個々人が学生対応に考えをめぐらしている様子を見てとることができました。学内の多くの見守り手によって、学生の大学生活が豊かなものになればと思っています。

(2)学生との協働の活動

平成28年度は、「誰もが使いやすい施設」を目指し、学生の視点で考えるバリアフリー化の取り組みを大学として行っています。まずは視覚しょうがいに着目し、現地施設調査、使いやすい施設の検討を経て、点字ラベルの準備を行いました。例えば、教室ごとで出入口扉の開閉方法やノブ・ハンドル等の形状がそれぞれ異なるとき、どのように点字ラベルを表示するかなど、学生の豊かな発想と実用とを結びつける実りある機会となりました。聴覚しょうがいのある学生にたいするノートテイク活動、車椅子による構内バリアフリー体験など、学生の力によって成り立っているしょうがい学生支援です。

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