北京師範大学留学体験記-2026.6
| 所属 | 高等学校教育専攻 地歴・公民専修 |
|---|---|
| 留学先大学名(国) | 北京師範大学(中国) |
| 留学先での専攻 | 中国語(漢語進修生) |
| 留学期間 | 2025 年 9月~ 2026 年 6月 (3年次に留学) |
| 奨学金受給 | 有(愛知教育大学未来基金) |
【留学先大学について】
学生数
29,673 人(全日・非全日を合わせた本科生, 研究生の数)
留学生数
958 人
(留学生の主な国籍:ロシア, ベトナム, インド, イギリス, タイ, 韓国)
(うち日本人留学生数: 30人程度)
学部
3つの学部,25の学院,2つの系,11の研究院から成る。
師範大学という名前ではあるが総合大学である。
教育学部, 心理学部, 地理学部, 物理天文学院, 芸術メディア学院など多様。
大学の特徴
国際的にも先進的な大学として名を馳せる国内トップの教育大学。
大学の立地
メインキャンパスは,北京市内の文教地区に位置する。
また,寮の目の前にはバス停があり,街中で利用できるシェアサイクルも普及しているため移動手段が豊富である。タクシーも日本の3分の1以下の料金で快適に利用できる。交通費は,毎週末に外出をしたとしても月5000円ほどに収まる。
【授業について】
受講した授業科目
聴力(リスニング), 読写(リーディングと作文), 会話, 報刊(新聞)
生活中国語, 中国歴史, 中級中国語, 古代中国語, 中日関係史
受講を薦める科目
(上記科目のうち,2行目に記したものが自分で選択し受講した科目)
生活中国語の授業では,食や旅行などのトピックを題材に,実用的な表現を学んだ。冬休みの時に1人で国外旅行をした際にも,授業で扱った空港での必須単語や手続きの流れに関する知識が非常に役立ち,スムーズに行動することができた。
履修方法
最初の学期には,簡単な自己紹介とその場で渡された文章の音読による口頭プレイスメントテストを受け,自分のレベルを確認する。授業開始後の1週間は履修変更期間となっており,他のレベルのクラスを聴講して比較することもできる。その見学期間を経て,最終的に自分に合ったクラスを決定する。
外国語補講
無
勉強についてのアドバイス
クラス選択の際には,なるべく人数の少ないクラスを選ぶことをお勧めします。語学を学ぶ上では,多く話し,多く聞くことが上達の要になると私は信じています。時には語学力の伸び悩みから発言をする自信を失うこともあるかもしれません。そんなときも,人数が少ないクラスであれば,アットホームな雰囲気の中で自然に発言の機会が回ってきたり,先生やクラスメイトが親身に耳を傾けてくれたりするので,焦らずに一歩ずつ学習意欲を取り戻すことができます。人と比べて自分の意思を伝えるのを楽しみ, ステップアップしていける環境を選ぶことが大切だと思います。
・(教職希望の学生の場合)
北京師範大学内には,「教育学社」という名前の学生団体があります。そこでは,教育に関心のある学生と知り合えたり,彼らと週末に博物館に行ったりすることが出来ます。教育学部の中にも,学科に特化した学生や,特別支援教育を学ぶ学生など様々な専門の学生と知り合うことが出来ました。また,秋には「文化考察」というフィールドワーク型の旅行があり,同じクラスのメンバーと教育に関係のある施設や学校に赴く機会もあります。
【留学前準備について】
準備期間
留学の1年前から準備
準備内容
語学の勉強, センターへの必要書類の提出, 奨学金の申請, ビザの取得, 現地到着後の生活について情報収集(健康診断,銀行カードの手続きなど), 各書類の印刷
留学先の情報収集方法
学内では,留学経験のある先輩や,派遣先大学から来ている留学生に直接質問をして情報を集めた。そのほか,インスタグラムで派遣先大学の日本人コミュニティが主催している説明会に参加し,そこで現地のリアルな状況を質問したり,連絡先を交換したりして情報を得た。
語学準備
半年前から本格的に開始。(学習方法:中国語の授業を履修。趣味での勉強に加えて中国語検定の受験を目指しての勉強にも取り組んだ。)
ビザ取得の有無
有(取得に要した時間 2週間程度)
ビザ申請時の注意事項
事前に申請書をネットで作成してその印刷を持参する必要がある。その申請書と申請費用,写真を持って,名古屋中国ビザ申請サービスセンターに向かった(2025年11月1日より中国駐名古屋総領事館へ業務が移管されている)。
ビザ用の写真については規格が非常に厳しいため,背景は白,服装は濃い色のシャツを着用して撮影すると良い。少しの反射や影があるだけで撮り直しを命じられる。私の場合は,幸いビザセンター内に証明写真機が設置されていたため,その場で撮り直して事なきを得た。
留学期間によって,X1ビザとX2ビザの2種類に区別される。長期留学(X1)の場合,入国回数はシングルで申請することになるが,現地到着後に居留許可申請を行うことでマルチプル(複数回出入国可能)に切り替わる。
航空券
片道 4万~7万円(経由の有無や経由地によって変動あり)
日本から持参した方がよいもの
常備薬, 2台目のスマホ, 到着後1~2週間程度の現地SIM, VPNの設定, 教員採用試験や語学・興味のある本, 歯ブラシ, 体温計, 生理用品, スーツケースの重さを測る秤, スマートウォッチ・パスポート携帯用ケース(安全のため), 友達からの手紙
留学前にあると良かった情報
空港から大学やホテルまでの移動手段は,出発前に現地にいる友人に連絡を取って相談したり,大学が提供している送迎サービスを利用したりして,事前に手配しておくのがおすすめである。
携帯電話の契約を銀行口座の開設前に済ませておかなければならなかったことや,その携帯電話の料金相場を現地に滞在している学生から事前に教えてもらっていたことが非常に役に立った。また,実際の契約手続きの際にも,北京が地元で,愛知教育大学で知り合っていた友人に助けてもらったためスムーズに進めることができた。
他にも,日本から現地への海外送金について事前に調べておく必要があった。通常の海外送金は手数料が高いため,それを回避するための手段を出発前に用意しておくことが重要。また,現地で銀行口座を開設する際にも,海外からの送金受け取りに対応している大手銀行を選んで手続きを行う。
【留学先について】
都市(街)の名前
北京市(海淀区)
規模・雰囲気
北京市は中国の首都であり,人口2000万人を超える世界屈指の大都市である。しかしながら,大学付近は文教区であり比較的落ち着いた雰囲気であった。
気候
雨がほぼ降らず乾燥している。冬場は強い風が吹く音で寝れない日もあった。
治安
大学内は,夜11時頃までグラウンドで運動をしている学生や,外を歩いている学生が多く活気がある。留学期間中に危険な目に遭うことはなかったが,念のため,夜間は大学の外へ1人で出歩かないようにしたり,暗い路地に入らないようにしたりと,日頃から防犯意識を持って行動することを心がけた。
【日常生活について】
滞在先
滞在形態
寮
部屋の種類
共同(2人部屋,留学生)
家賃
月額 5万7千円程度(光熱費水道代込み)
滞在先での問題
洗面所,リビングルームはルームメイトと共同。洗濯機とキッチンは1フロアごとの共有。(洗濯は1回50円ほど)
半年に2回ほど,一度に多額の家賃を支払う必要があった。しかし,この金額をクレジットカードで支払うと高額な海外決済手数料がかかってしまうため,日本の口座から現地の銀行口座へお金を送金して支払う必要があった。
長期休みには,一度チェックアウトをすれば,荷物をまとめて預けて置くことができる。このようにしてチェックアウトをしたあと一定の期間内で旅行に行く場合は,その期間の家賃を払う必要がない。
飲み水は,1週間に一度345円ほどの15Lの水タンクを購入しルームメイトと共有。
医療(日本から持参した方がいい薬,健康管理の注意点,利用病院名,費用など)
日本からは芍薬甘草湯などの漢方薬,痛み止め,風邪薬,絆創膏を持参した。健康管理の面では,水道水は飲まず,必ずミネラルウォーターを購入して飲むように徹底した。
私は出発前に愛知教育大学の国際交流センターと相談し,東京海上日動の海外留学保険に加入していた。費用は留学期間全体で約8万円であった。留学中,大学からタクシーで30分ほどの場所にある北京国際医療センターに3回ほどお世話になった。本保険が適用される病院であったため,現地での実費負担は無料で済んだ。
市販薬に関しては,現地のアプリを使って薬局にある薬が簡単に購入でき,デリバリーを利用して30分ほどで大学まで届けてくれる。
食事(学食・外食の値段など)
食堂は大学内に6つほどあり,どこでも学生証にお金をチャージして,大体一食200~500円ほどで食べることができる。夜の閉店時間が7時頃と早いため,食堂が閉まった後はデリバリーを注文することもあった。デリバリーの場合は,一食600円ほどが目安となる。一方で,綺麗なショッピングモール内にある飲食店で外食をすると,一食1500~3000円ほどかかり,日本とあまり変わらない価格帯である。また,朝ごはんは特に安く,100円前後から,肉まん,トウモロコシ,豆乳などをいただくことができる。
買い物(お店の名前など)
淘宝や京東というネット通販サイトをよく利用した。サイトによっては,30分以内に届くものもあれば,遅くとも3日で寮の前のデリバリーボックスに届く。洋服はもちろん家電なども購入できる。配達員はよく電話をかけてくるため,配達員から到着の電話がかかってくることが多いため,簡単な中国語でやり取りをする良い実践の機会にもなった。
学内には,「物美」という学内のスーパーがあり,日用雑貨から食べ物まで大体のものが揃う。日本の製品が欲しい時には,大学から地下鉄に乗り1時間半ほどで「華堂商場(イトーヨーカドー)」にも行ける。他にも,近くに無印良品,ユニクロなどがあり,日本の値段よりは割高ではあるが,よく利用した。
長期休暇の過ごし方
毎月の様に時間を探して旅行に出かけた。愛知教育大学で出会った友達を探しに国内旅行をすることが多く,1月には哈爾浜で6人が集まって一緒に過ごしたのは非常にいい思い出である。
10月には呼和浩特,11月には山東省・済南と曲阜,2月に昆明を経由してネパールへ赴いた。3月は家族と北京旅行,4月に山西省・大同,5月に長春と河北に出かけるなど,充実した時間を過ごした。
他にも,長期休みには文化コンテストがあり,習字と作文コンテストに参加し入賞した。
インターネット,携帯電話の使用環境
現地到着後,1週間程度で携帯電話番号付きのSIMカードを購入した。料金は1か月60GB使えて1年間で約1万4千円であった。中国国内であれば,このSIMカードをどこでも問題なく安定した品質で使用することができる。
また,寮や教室を含めた大学内では,1か月100GBまで無料で学内Wi-Fiを利用することができた。100GBを超過した場合でも,10GBごとに230円という安価な料金でチャージして利用することが可能であった。
日本で使っているアプリを現地でもそのまま使用するためには,VPNの設定が必要不可欠である。そのため,日本を出発する前に,スマートフォンだけでなくパソコンを含めたすべての利用媒体で設定を済ませてから持参するようにする。
服装,習慣・マナーの違いなど
・市場や屋台などで物を買うときには,値引き交渉が暗黙の了解となっている場所がある。
・特に大学構内では,毎日張り切って化粧をしている学生を見ることは,ほぼない。
・肉類は骨のある料理が多く,食べ終わった骨を机の上に直接置くなど,日本ではあまり見られない特有のマナーがある。
・お手洗いにはトイレットペーパーの常設がなく,日本と比べて衛生面で綺麗とは言えない場所が多めである。
【1日のスケジュール例】
7時半起床
8時朝ご飯
10時授業
12時お昼ご飯
13時授業
15時授業終了,お出かけ
18時晩ご飯,サークル活動に参加
19時勉強,読書
23時就寝
【留学中,特に苦労したこととその対処法】
人間関係について悩んだ。
【留学を検討している学生にアドバイス】
教育学部生にとって,留学に行くことを決めるのは容易ではありません。
【留学先での成果等】
(語学力の面から)
現地に到着して以降,特に聴力とスピーキングの面での成長が著しかった。
しかし,帰国前に再び友人たちに会いに行ったときには,ほぼ全員が自然なスピードの中国語で話しており,サポートがあったものの,私もそれを無理なく聞き取ることができていた。彼女たちの母語のスピードにしっかりと付いていけていること,そして彼女たちの母語そのもので対等に会話ができていることが,現地の生の声に直接触れているようで,言葉にできないほど嬉しかった。
食費も安く,1食の量も多いことから,滞在中はたくさん食べようと思っていた。
(学生交流の面から)
特に留学の前期は,積極的に運動に取り組んだ。学内の山登りサークル(登山サークル)の活動では,当初は10分も走り続けられなかった私が,最終的にはフィールドで40分間走り続けたり,23階までの階段を3回も駆け上ったりできるまでになった。これは,体力がなかった私を側で励まし,応援し続けてくれた友人たちの存在があったからだと深く感謝している。
また,教育学社というサークルにも所属し,魯迅博物館へ出かけたり,一緒に映画を鑑賞したりと,文化的な活動にも多く参加した。魯迅博物館に一緒に出掛けた友人からは,中国の文化や歴史について多くのことを教えてもらった。その友人とは,日頃から一緒に大学の図書館で勉強しただけでなく,清明節の連休を利用して一緒に大同へ旅行に出かけるなど,非常に濃密な時間を過ごすことができた。
教育学部に入学して,先生になるために,留学は必須条件ではない。
それと同時に,あるいはそれ以上の大きな気持ちとして,この機会を得る手助けをしてくださった国際交流センター,留学を後押ししてくれた留学生の友人たち,貴女なら大丈夫と背中を押してくれた友人たち,現地で出会った各国の留学生,そして私を海外に送り出してくれた母と父に,心からの大きな感謝を伝えたい。
【留学経験や成果の活用について】
留学期間中に「先生になろう」と強く決意できたことは将来の道を決める転機となった。
北京師範大学で出会った先生たちは,どの先生も教育に対する熱意が非常に強く,学生をどのように学びへと引き込み,成長を促すかという視点を常に持っていた。教科書の使い方から,授業内の時間配分,さらにはテストや課題の採点の仕方に至るまで事細かに計算されており,その徹底した指導法から多くの刺激を受けた。こうした指導を徹底する先生方の姿を通じて,教育という営みの奥深さとプロフェッショナリズムを肌で感じることができた。
現地で出会った先生たちは,知識を教えるのではなく,学生と教育と向き合い,その主体性を引き出すための工夫をしていた。それは,私たちが外国語を異文化のなかで葛藤しながら学んでいることを,深く理解してくれているからこそだと感じられた。将来はそんな先生方の様に,多様な背景を持つ子どもたちや課題に直面している児童生徒に対して,彼らに今どんな学びが必要なのか寄り添いながら向き合っていきたい。これからの大学生活でさらに専門性を深め,子どもたちの成長を力強く支えられる教員を目指したい。
