ここからコンテンツです。
花壇づくり
花壇の作り方
【はじめに】
花壇は人工的に作ったものなので、環境教育とは無関係のように思えます。購入してきた苗を植え替えることによって、見栄えのよい花壇をただ作るのであれば、体験学習の一つと見なすことができても、環境教育と考えるのは無理でしょう。しかし、土づくりから始め、タネまきから花を育て始めるのであれば、環境教育の一環であると考えることができます。土づくりで使用する堆肥には、落ち葉や食事の残飯などが原料として使われています。これはまさに、ゴミのリサイクルです。また、タネまきから植物を育てることは、とても手間がかかる作業です。芽生えは小さいので、水やりを忘れると、直ぐに枯れてしまいます。雑草を抜くためには、両者を見分ける注意深い観察が必要となります。花壇づくりには愛情を持って、取り組むことが大切です。対象が花であれ地球であれ、他者を愛し、そのために細かい気を配り、先を見通し、手間をいとわない気持ちを育てることが環境教育の目的ではないでしょうか。
このコーナーでは、環境教育としての花壇づくりに取り組めるよう、基礎的な事柄から解説しています。花壇づくりの参考にしていただければ幸いです。
準備編
場所の整備
花壇を作る場所は、校舎や家屋の南側か東側の、日当たりのよい場所が適しています。西側で午後しか光が当たらない場所でもたいていはどうにかなりますが、北側で一日中日が当たらない場所ではほとんど草花は育ちません。ただし、タネをまいたりさし木を行うには北側の方がよいでしょう。また、玄関が北側にあり、その周りを花で飾りたいときはプランターを利用します。花を植えたプランターをいくつか作り、日当たりのよい場所と玄関前をローテーションさせてください。
場所が決まったら、大型のスコップで土を深さ30センチくらいまで掘り返し、土のかたまりを砕き、石や古い根などを取り除きます。この作業を荒越しといいます。それから必要に応じて腐葉土か堆肥を入れます。土壌を中和させるために石灰(注1)を1平方メートルあたり200グラム程度まいてよく混ぜ、次の週まで放置して土になじませます。次に元肥となる肥料を入れて、再びよく混ぜます。肥料としては、リン酸分を多く含んだもの(例えば、マグァンプK)が花には適しています。いろいろなものが市販されているので、草花用のものを選んで購入してください。ちなみに、野菜用の肥料を与えてしまうと、茎や葉はよく茂りますが花が小さくなってしまいます。肥料の散布量は説明書の指示に従ってください。
以上が、花壇を作る場所の整備の仕方です。今まで植えてあった植物を取り除いて新しい植物を植える時にも、同様の作業を行ってください。また、花壇の奥行きが1メートルを超えると、雑草を除去などが行いにくくなります。花壇の間に土を耕さない部分を残しておき、通路として利用してください。
注1:園芸用にマグネシウムを混ぜた苦土石灰が適しています。グランドのライン引きで使う消石灰で済ませることもできます。
必要な道具
花壇づくりには、いくつかの道具が必要です。いずれも高級品は必要なく、ホームセンターや100円ショップで売っているもので十分です。
- スコップ
荒越しの時などに使います。先が尖ったものと四角いものが販売されていますが、どちらか一つを選ぶなら、先が尖ったものがよいでしょう。 - 移植ごて(いしょくごて)
植え付けなど、様々な作業に使います。柄が金属製のものは手が痛くなるので、木製のものがよいでしょう。 - 園芸用はさみ
枝や葉を切るときに使います。普通のはさみでも代用できますが、できれば園芸専用のものをつかってください。 - じょうろ
植物に水を与えるときに使います。花壇全体に水をまくとき、近くに水道があれば、シャワー型ノズルを付けたホースを使うと楽です。 - 霧吹き(きりふき)
薬剤散布に使用します。 - 箕(み)
土や枯れた枝葉、抜いた雑草などをまとめて運ぶのに使います。 - ふるい
花壇のみなら無くてもかまわないのですが、プランターで一度使用した土を再生するのに必要です。 - 作業用手袋
細かい作業は素手の方が都合がよいのですが、荒い作業には手袋があると便利です。軍手で十分間に合います。最近では、子供用の軍手も販売されています。 - 育苗ポット
タネまきをした苗を、ある程度大きくなるまで育てるのに使います。大きい園芸店やホームセンターなどで、20個または100個単位で売られています。直径7.5センチか9センチのものが使いやすいでしょう。 - プラスチック製の四角いかご
苗を植えた育苗ポットをまとめておくのに使います。 - プランター
移動式の花壇を作るときに使います。いろいろなタイプが売られています。好みと予算で選んでください。
堆肥づくり
樹木が多い学校では、秋になると多量の落ち葉が出ます。常緑樹の場合、春にも落ち葉が出ます。これらの落ち葉は、ゴミとして処分せず、校庭の隅に板囲いなどをして積み上げておきます。途中1~2回スコップで混ぜ合わせておけば、数ヶ月でよい堆肥ができます。樹木の刈り込みなどで出た小枝(太い枝も小さくすれば使える)や、校庭の除草作業で抜いた雑草も、一緒に堆肥にすることができます。
食事の残飯もゴミで出さないで、堆肥にするとよいでしょう。ただし、生ゴミを校内で積み上げておくのはよくないので、生ゴミ処理機が必要です。
この様にして、落ち葉や生ゴミを減らして、花壇づくりに活用することを学ぶことも、重要な環境教育です。
栽培計画
花壇は人工的に作ったものなので、環境教育とは無関係のように思えます。購入してきた苗を植え替えることによって、見栄えのよい花壇をただ作るのであれば、体験学習の一つと見なすことができても、環境教育と考えるのは無理でしょう。しかし、土づくりから始め、タネまきから花を育て始めるのであれば、環境教育の一環であると考えることができます。土づくりで使用する堆肥には、落ち葉や食事の残飯などが原料として使われています。これはまさに、ゴミのリサイクルです。また、タネまきから植物を育てることは、とても手間がかかる作業です。芽生えは小さいので、水やりを忘れると、直ぐに枯れてしまいます。雑草を抜くためには、両者を見分ける注意深い観察が必要となります。花壇づくりには愛情を持って、取り組むことが大切です。対象が花であれ地球であれ、他者を愛し、そのために細かい気を配り、先を見通し、手間をいとわない気持ちを育てることが環境教育の目的ではないでしょうか。
このコーナーでは、環境教育としての花壇づくりに取り組めるよう、基礎的な事柄から解説しています。花壇づくりの参考にしていただければ幸いです。
実践編
タネまき
家庭の花壇では、ポット苗を購入してきて植えるのが楽です。様々な種類の苗が販売されており、価格も60~100円程度です。しかし、学校の花壇は広いため、数多くの苗が必要になります。植物の命との触れあいを楽しむという点でも、できればタネから苗を育ててみてください。 タネまきの適期は、ほとんどの植物が4~5月か、9~10月ですが、ハボタンなどのように夏にタネをまきます。種類ごとの適期や特有の注意点はタネの袋に書いてあるので、それに従ってください。タネまきには2つの方法があり、花壇へ直接タネをまく「直まき」と、タネを容器などにまいてある程度成長させた後で花壇へ植え付ける「箱まき」が行われています。
【直まき】
「直まき」は比較的大きなタネの植物(ヒマワリ、ヒャクニチソウ、コスモス、キンセンカ、ナスタチウム、スイートピーなど)に向いている方法です。まず、花壇に20~30センチ間隔(ヒマワリのように大きくなる植物の場合には、もっと間隔をあける)で、タネの大きさの2倍程度のくぼみをつけます。それぞれのくぼみにタネを2~3個やや離してまき、タネがかくれる程度に土をかぶせ、じょうろで水をたっぷりかけます。発芽して葉が数枚出てきたら、同じ場所から複数の芽が出ている場合は最も生長がよいものだけを残して、他は抜き取ります。また、直まきが適している植物でも、花壇に別の花が咲いていてタネがまけない場合や、補植用の予備苗を作りたい場合は、直径9センチのポットに肥料を混ぜた培養土を入れ、それにタネをまくとよいでしょう。
【箱まき】
「箱まき」は少し手間がかかりますがより確実に苗を育てることができる方法です。タネが小さい植物はこの方法で苗を育てます。まず底が浅い植木鉢(いちごパックの底に、水抜きのための穴を数カ所あけたものでよい)などに市販の培養土を入れ、板きれなどで土の表面を平らにならします。次にタネをなるべく高い位置(箱からこぼれない程度の高さ)から、できるだけ箱全体に均等に散らばるようにぱらぱらとまきます。一つの箱にあまりたくさんのタネをまかないようにするのがコツです。タネが余ったら、箱の数を増やすとよいでしょう。タネをまき終えたら薄く土をかぶせ、じょうろで水をたっぷり与えます。発芽するまでは日陰に置いて適切に水をかけ、乾燥させないよう管理します。新聞紙などをかぶせておくと乾燥しにくくなり、雨によってタネが飛ばされることを防いでくれます。季節によってはカビが発生して発芽率が悪くなるので、注意してください。発芽したら新聞紙を取り除いて、日当たりのよい場所へ箱を移し、土の表面が乾いたら水をかけます。 葉が数枚出てきたら1株ずつなるべく根に付いている土を落とさないよう注意しながら育苗用プラスチックポット(直径7.5センチのものg使いやすい)に植え替えます。植え替えるときの土も、市販の培養土(元肥が配合されていない場合は肥料を加える)を用いるのが無難です。子葉が残っている株の場合は、子葉を痛めないよう、また土に埋めてしまわないよう注意してください。苗を植えたポットは浅いかごなどに並べて、日当たりのよい場所に置きます。かごの周辺部のポットは乾燥して育ちが悪くなります。逆に、中心部のポットは込み合っているため、茎や枝が無駄に伸びてしまいます。時々周辺部と中心部を入れ替えてください。葉がポットの表面をおおう程度に育ったら、花壇へ植え込みます。
定植
ポット苗として育てた植物なら、定植は簡単な作業です。天候もあまり気にしなくてもよいでしょう。花壇のデザインを決めて植え込んでいきます。株元までしっかり土を寄せますが、葉が土に埋まらないように注意してください。株にかかった土は払い落としておきます。キンセンカのように雨ではねた土が葉に付着すると生育が悪くなる種類の場合、株元にワラや落ち葉を敷いておきます。植え終わったら十分に水を与えます。地植えの場合、給水は雨に頼るのが原則です。活着(根付いて生長すること)したら、よほど晴天が続いて植物がしおれない限り、水をやる必要はありません。
一度花壇に定植した苗を他の場所に移したくなった時には、次のことに気を付けてください。細い根がたくさん出る植物は、できるだけ大きめに掘り取り、土を付けたまま目的の場所へ移し、すぐに十分水を与えます。茎や葉が大きく伸びている場合は、適当に切りつめて、しおれるのを防いでください。太い根がまっすぐに伸び、細い根のあまりでない植物(直根性という)は、移植が難しいことが多いようです。
球根の植え付け
チューリップやスイセン、ヒアシンスなど球根から育つ植物は、球根の中に生長や開花に必要な物質をある程度貯蔵しているため、タネから育つ植物に比べて育てやすく、容易に花を咲かせることができます。ただし、花が咲いている期間は、タネから育つ植物よりも短いのが一般的です。
球根を植え付ける場合、花壇に元肥を入れて土とよく混ぜ、球根の高さの3倍程度の穴を掘り、1個ずつ入れて土をかけます。ただし、ユリは15~20センチの深さに植えます。植え付けの適期や植える間隔については、それぞれの球根についている説明を読んでください。
球根植物は、花が終わったら実ができないように花部を切り取ります。株元に、固形肥料を置くか、薄めた液肥を与えてください。葉が枯れ始めたら掘りあげ、日陰干しにして次の植え込み期まで保管しするのが原則です。種類によっては、植えたままにしておいても、毎年、花がよく咲きます。
病虫害
花壇で育ち始めた苗が、突然、株元から切られてしまうことがあります。これは多くの場合、人のイタズラではなくガの幼虫の仕業で、株の周辺の土中をさがすと土色のイモムシが出てきます。この他にも、新芽や若葉が食い荒らされたり、アブラムシが発生したり、葉に白いカビ状のものがついたりすることがあり、茎や葉が腐ったようになって枯れることもあります。
病虫害は植物が過密になると発生しやすいので、苗を植えるときに見栄えが悪くならない範囲でできるだけ株の間隔を開け、花壇の風通しをよくします。病虫害が発生してしまったら、被害と症状に合わせて園芸店などで市販されている殺虫剤や殺菌剤の中から適切なものを選び、書かれている処方通りに散布します。病気の場合、その株を救うよりも他の株への感染させないことが重要です。特に、茎が腐ったようになった場合や株元に白い糸状のものが発生した場合は、気付いたらすぐに株をまわりの土ごと除去し、焼却処分します。
花がら摘み/切り戻し/追肥
【花がら摘み】
花が咲いてしばらくたつと、咲き終わったものが目立つようになります。目障りになる場合はタネをとるものを残して柄ごと切り取ります。こうすることによって見栄えがよくなるだけでなく、実に回される栄養分がなくなり、次の花がよく咲くようになります。
【切り戻し】
ほとんどの花が咲き終わった株や元気がなくなってきた株は、茎を全体の1/3くらい残して切り取ると、再び枝が伸びて花をつけるようになることがあります。これを切り戻しといいます。切り戻しをする時は株の状態をよく観察して、これから伸びる脇芽を残すようにします。
【追肥】
大きく育つ植物や開花している期間が長い植物は、肥料が切れてしまうことがあるので、生育途中で肥料を供給してやります。これを追肥といいます。追肥は、緩効性の固形肥料を株元に置いたり、市販の液肥を2000倍程度に薄めたものを水の代わりに与えたりして行うのが普通です。
タネとり
最近の農作物は交配等による品種改良が進み、毎年タネを種苗会社から購入しないと安定した品質のものが作れなくなっています。学校の花壇でも、タネをとって翌年にまけば、毎年花を咲かせることができますが、花の色はなかなか思うようになりません。
タネをとる時は、実の熟し方をよく観察して、タネが自然にこぼれる直前に実ごとつみ取り、封筒などの入れて自然に乾燥させます。パンジーやビオラは、実ははじめ横を向いていますが、そのうち上を向き、はじけてタネを飛ばします。そこで、実が上向きになったところでつみ取るとよいでしょう。また、一つの封筒に入れる実は少なめにします。入れすぎると乾燥が遅れ、タネの発芽率が悪くなります。
さし木
植物の種類によっては、枝を切ってさし木(さし芽ともいいます)すれば、簡単に株を増やすことができます。さし木によって殖やした苗は、花の色や大きさなどの性質が元の株と同じなので、花壇へ植えるとよくそろい、見栄えがよくなることが多いようです。
ポーチュラカなどは枝を切って土にさしておけば、いくらでも新しい苗ができます。しかし、たいていのものは同様にさし木しても活着率が低いので、小さい底面給水鉢にバーミキュライトを入れて、それにさし木をします。新芽は葉の付け根についています。さすための枝を切るときは、必ず、新芽がいくつかついているようにしてください。葉はしおれるのを防ぐため、一部を残して切り取ってください。伸びている盛りの枝の先端は、まだやわらかく、さしても枯れてしまうことが多いようです。枝をさした鉢は日陰に置き、水を切らせないように注意してください。発根ホルモン粉剤を切り口にまぶすか、液剤を薄めて与えると、活着率がよくなります。根が出て新芽が伸びてきたら、花壇に定植します。
アゲラタムなどは水にさしておくだけで発根するので、水を換えながら管理し、根がある程度伸びたところで花壇に植え込みます。ポーチュラカやエボルブルス・アメリカンブルーなどは戸外では冬に枯れてしまいますが、鉢にさして室内に置けば越冬させることができます。
ひとり生え
フランスギク、オオキンケイギク、カモミールのような半野生化している植物は、一度植えれば次の年からいくらでも芽が出てきて、抜くのに苦労します。そうでない種類でも、2~3年タネをとってまくことを続けていると、そのうちに、ひとり生えの苗がたくさん出てくるようになることがあります。コスモス、コリウス、ネモフィラ、ノースポール、ヒメキンギョソウ、ハナビシソウ、ポーチュラカ、マツバボタン、メランポディウムなどは、よくひとり生きが出てきます。小さいうちは雑草の芽生えと紛らわしいのですが、子葉や本葉の形、色などに注意して観察してください。そのうち、見分けられるようになります。
ひとり生えの苗は丈夫なことが多いので、掘り集めて植えれば、見事な花壇を経費無しで容易に作ることができます。
プランターでの栽培
プランターに花苗を植えるときは、まず底に深さ2センチくらい、大粒の赤玉土を入れます。次に土を入れ、苗を植え込んで、底からしみ出てくるまで水を十分に与えます。地植に比べてずっと乾きやすいので、植え込んだ後も、土の表面が乾いてきたら水やりを忘れないようにします。ただ、表面が乾かないうちに水をやりすぎると、根腐れを起こして枯れてしまうので注意してください。 苗を植えるのに使う土は、市販の培養土を使うのが無難です。植える植物の種類に合わせて配合した「XXの土」という商品も販売されていますが、元肥入りでない土を購入して自分で花壇の時と同様(参照:場所の整備)に元肥を加えてもよいでしょう。元肥は、一般的な65センチのプランターの場合、プランター1杯分の土に対して大人の手で半握り程度が標準です。
花が咲き終わった後の土は、できるだけ再利用してください。雨のかからない場所にプランターを置いて、ある程度土を乾かします。次にプランターから土を出して、底の赤玉土をふるい分けます。植物が植えてあった培養土もふるいにかけ、枯れた植物体や古い根を取り除きます。古い根があまり残ってないときはコガネムシなどの幼虫が食害していることがあるので、幼虫も注意してふるい分けます。ふるいを通した土は、石灰を混ぜて、ビニールシートなどの上に広げて数日直射日光にさらし、殺菌と殺虫を行います。赤玉土も同様に干します。その後はビニール袋などに入れて保管します。再使用する前に、腐葉土か新しい培養土を1/3程度加え、元肥も加えてよく混ぜてください。
ここでコンテンツ終わりです。